紀行文
天城道踊り子遊歩道
道谷 嘉代子
妹と二人で春一番に咲く可愛い小振の桜に出会った時、一度湯ヶ島から天城トンネルを通り河津へ抜ける道を訪ねてみたいと思っていました。今日はその日です。昨日から例のごとく(旅する時)アレコレと落ち着かず朝四時に目覚め、宿六さんに「お楽しみでよろしいですね」と言われ、私は「後の事は頼むね」といそいそと待ち合わせ場所でバスに乗り込みました。
天気よし!気分よし!と気合の入った私でした。“伊豆の踊り子”(川端康成)に出て来るほのぼのとした恋心を描いた湯ヶ島付近に入ると、清流に育つわさび田もぼつぼつ見え始め、木村屋さんの温泉饅頭をほうばり、水生地下駐車場にて下車、ウォーキングが始まりました。
 太郎杉が四百年をかけて大地に根を張り、天を目指し雄々しくたっています。力強く生きる逞しさを感じます。その力を分けてもらえたような気がして、思わず有難う、と手を合わせました。宿の木太刀荘では、川のせせらぎと優し色づいた紅葉の鮮やかさと、十分余裕のある時の流れに贅沢さを感じていました。

 翌日は快調の出足で天城トンネルを通った所まではよかったのです。トンネルを出たとたん、あじわい深い紅葉が目にとびこんできました。さらにブナ・カエデ・モミジ・落葉樹の織りなす色が、九十九折になっている道に見えるのです。私の目は道の山側と渓流の方へ落ち着きなく動き始めてしまったのです。
美しい物を見るとろくでもない事が起きるのが私です。楽しい会話を続けながら、ちょっと誉められたのが運のつきで舞い上がり、河津七滝へ向かう途中、どこでどうなったのか、蛙が押し潰されたような恰好で前へつんのめっていました。慌てて立ち上がり見栄をはり取り繕って、その場は収まりました。
 その後の昼御飯は、おいしく戴き役員さんの入れて戴いた温かいコーヒーにも大満足し、七滝も無事通過、温泉にも入ってさっぱりし完歩出来た事と、中伊豆の紅葉に出会えた事に感謝し帰路に向かったのです。
 私の個人的な出来事はこれだけではなかったのです。会員番号を間違えたり、申し込んでいたお饅頭を取りに行かなかったり・・・・宿六さんに報告すると「やはり天然ボケとジャジャ馬は隠せなかったか」とつれない返事。それにもめげず、「継続は力なり」と自身に言い聞かせ、次の一期一会と私のウォーカーの成長を期待し、役員の皆様の細かい気遣い、ご苦労、またウォーキング仲間の温かい眼差しに感謝し、ペンを置きたいと思います。