連載

(8)
橋について −
黒江 輝雄
 振り返って考えてみると、私は生まれてからこれまで、川のそばとか海沿いなどに住んだことはありません。
従って、普段の日常生活圏の中で、川にかかる橋を往き来するということはありませんでした。
橋を渡るのは、遠出や観光地を旅行したときなどが主でした。
歩き方をはじめて気がつきましたが、どの例会に参加しても必ず何ヶ所かは橋を渡るところがあります。
湘南大橋
湘南大橋とか江ノ島に渡る橋などのように、人通りが激しく車の往来が多い所は普通の道路と同じ感覚で歩いていますが、畑や田んぼの中などの、小さな小川にかかっている、今にもくずれ落ちそうな苔むした土橋などには、なんとなく郷愁を覚えます。
橋の名前はたしか、漢字とひらがなで表記されていると思ったので、念のため私の住い近くの、小糸川と引地川を歩いてみました。
両方の川にかかる橋には、片側は「大庭橋、こいとがわ」反対側には「おゝばはし、小糸川」とか、片側は「引地川、しろしたばし」反対側は「城下橋、ひきちかわ」などのように川と橋の名前が、漢字とひらがなで交互に書かれていました。

 普通、橋といえば川にかかっている橋を連想しますが、橋にもいろいろあります。
横断歩道橋、跨線橋なども風情はありませんが、立派な橋です。
なかには橋の上を跨いでかかっている「橋上橋」とか、橋の真ん中に信号機がある「信号機橋」などもあるでしょう。

 橋は、倒木がたまたま川にまたがってできた丸木橋などは別ですが、全部人手がかかったものです。
錦帯橋
岩国の錦帯橋とか京都の渡月橋、高知のはりまや橋など、有名で文化財的な価値のあるものもたくさんあります。
昔は橋の「らんかん」には、「ぎぼし」という橋独特のとんがりボウシに似た飾りがありましたが、近代的な橋ではついぞ見かけたことはありません。
 
 赤いらんかんに黒いぎぼしがついた橋に出遭うと、街を歩いていて日本髪を結った和服姿の女性とすれちがったような感じがします。

 よこはま協会が主催している神奈川の橋100選など、いろいろな名橋を紹介していただける企画がありますが、私は、これからも「ぎぼし」と「日本髪」に出遭うことを期待しながら歩くつもりです。 以上