連載

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 ― 実録「あるウオ−カーの話」 ―
黒江 輝雄
 先日、例会に参加して一人で歩いていた時のことです、後ろのお二人の会話が耳に入ってきました。70才前後の、長身でいかにもスポーツマンタイプの男性とほぼ同年代と思われるご婦人との会話です。
お聞き下さい。・・・

 「私は、かれこれ21年ほど歩いています。昔は登山をやっていて、三千メートル級の山々も随分登りました。山仲間の中には滑落死をした人もいます。
最近は山といっても、せいぜい丹沢に登る位です。
大体山で事故に遭う確率は90%が下りの時に発生しています。
それに高い山に登れば景色がすばらしいので、立ち止まって風景を眺めればいいのに、歩きながら見とれてしまって足元がおろそかになり事故を起こすことが多いのです。特にご婦人方にその傾向が強いようです。

 家で、ごろんと横になってテレビを見ていると、女房には「掃除の邪魔になる困った粗大ゴミ」だと云われます。
そんなこともあって、ウオーキングにはよく出かけます。毎週土、日とか火曜日や金曜日によく出かけます。
昨年の統計をとってみましたが、例会には128回参加して、距離は2000km以上になりました。
ウオーキングの時は、一切女房の世話にはなっていません。
出掛ける日の朝食は、前夜の夕食の一部を取り置いておき、それを朝食とします。自分でやってます。
昼食の弁当はコンビ二で買うおにぎりが主なものです。
今では小遣いの大部分はウオーキングに使っています。その内でも交通費が大半です。
 私はあまり遠出はしません。せいぜい神奈川、埼玉、千葉、東京などの近県に限られています。去年は約30万円使いました。

 現役時代には、仕事が終わると毎日会社の同僚たちと一杯やってから家に帰りました。小遣いは月にかれこれ8〜10万円ほど使ってたでしょう。
今では、外では飲みません、毎晩ワンカップ1本程度です。

煙草も昔は毎日50本ぐらい吸っていましたが、4,5年前にぴたりとやめました。だから毎月の小遣いは3万円程度で納まっています。
 女房も、現役時代の私よりは、「粗大ゴミ」の現在の方が、お金もかからないし、手間もかからず掃除の邪魔をしないで、ウオーキングに出てくれる現在の私にはきっと満足しているだろうと思ってます。」

・ ・・・この方は「今ちょうど庭に蝋梅(ロウバイ)が咲いていて、とてもいい香りがしています。」ともいってました。
ご本人のご了解をいただかないままに再録しました。
ご容赦願います。                  以 上