パリのウォーキング
弓 削 玄 雄
 
平成17年のゴールデンウイークに「南フランスの世界遺産」をツアーで訪れた。帰国の日、パリで、ホテル出発の午後1時までフリータイムとなった。パリは今まで幾度も訪れ滞在しているものの、いつもバス移動の観光だったので、市内のオリエンテーションがはっきりしなかった。 
 今回このフリータイムを利用し、土地勘をつけるためパリ市内を歩いてみることにした。泊まっていたホテルは、高層ビルが立ち並ぶパリの副都心ラ・デファンスにあるルネッサンス。このホテルは地下鉄1号線の西北の終着駅ラ・デファンスの近くにあった。

 5月4日(水)、どんよりとした曇り空で5月とはいえ寒い日だった。午前7時に厚手のジャンパーを羽織り、地図とビデオカメラを手にホテルを出た。地下鉄に乗り、3つ目のポルト・マイヨ駅からパリの大動脈といわれる大通りを東南の方向に歩き出す。

マイヨ広場→凱旋門(エトワール広場)

 マイヨ広場からグラン・ダルメ大通りの左側歩道を緩やかに上りながら一直線に凱旋門へと歩く。早朝のせいか歩いている人はほとんど無く、車も少なかった。また、この大通りには見るべき建造物もなかった。凱旋門まで歩いて初めてわかったが、凱旋門のあるエトワール広場は低い丘の頂上だった。

凱旋門→コンコルド広場

 凱旋門からコンコルド広場までは緩やかな下りとなる、この通りは有名なシャンゼリゼ大通り、世界の散歩道といわれ、マロニエやプラタナスの並木に葉が茂る美しい通り。白やピンクのマロニエの花が咲いていた。歩いている人は少ないものの、昨夜の賑わいの跡か、歩道のカフェテラスのテーブルや椅子が雑然と置いてあり歩きにくい。歩道の反対側には工事中のルイヴィトンの大きなビルもあった。コンコルド広場に近づき、お店が少なくなると、通りの両側は緑豊かな公園になった。

コンコルド広場→ルーブル美術館

 コンコルド広場のオベリスクを右手に見ながら広場を迂回し、テ
イルリー庭園の入口へと歩く。公園の入口から右手奥に「モネの睡蓮」で有名なオランジェリー美術館が見えた。道は広大な庭園のなかを突っ切り、カールゼル凱旋門を抜け、ルーブル美術館の塀に突き当たって終わる。
塀の向こうにはルーブル美術館のガラスのピラミッドが見えた。庭園内の途中から左折して約1kmも歩けば、パリの下町の中心オペラ座周辺に行けるが、今回は割愛した。カールゼル凱旋門で歩いてきた道を振り返ると、テ
イルリー庭園、コンコルド広場のオベリスク、凱旋門、ラ・デファンスの丘の新凱旋門グランド・アルシュが一直線に見通せた。つまり、ルーブル美術館のピラミッドから、新凱旋門までは一直線上にある。

セーヌ川右岸
 ルーブル美術館の塀に突き当たったので右折し、セーヌ川の右岸へ出て上流へと歩く。右手前方にシテ島の最高裁判所、その裏にノートルダム大聖堂が見えてきた。ここの横を過ぎると次はサン・ルイ島である。

セーヌ川左岸
 右岸からサン・ルイ島の上流側の先端で島に渡り、セーヌ川の左岸へ出た。今度は左岸を下流へと歩く。ノートルダム大聖堂内ではきれいに見える薔薇窓も外側から眺めた。この辺りから左側の街はカルチェ・ラタン、サン・ジェルマン・デ・プレと続く。ソルボンヌ大学やリュクサンブール庭園も近くだが、これも割愛。
シテ島の先端に架かるパリでいちばん古い橋ボン・ヌフのたもとを横切り、右岸にルーブル美術館の低く長い建物を眺めながら先へ進む。
オルセー美術館の低く長い建物を眺めながら先へ進む。オルセー美術館やブルボン宮の横、非常に美しいアレクサンドル三世橋のたもとを過ぎると、左手前方にヱフェルト塔がみえてきた。右岸にセーヌ川の観光船の船着場バトー・ムッシュ見てからアルマ橋を右岸に渡った。
 ここから斜めにマルソー通りを凱旋門へ緩やかに上り、凱旋門から地下鉄でホテルへ帰った。ホテル帰着、午前11時半、歩いた距離約14km。
 休憩なしで歩いたが、途中の小さな公園で花をめで、止まっては建造物や通りの名を地図で確認し、ビデオを撮りながらの歩きだった。約23年前、初めてパリを訪れたときは、セーヌ川がどの方向に流れているかも判らなかったが、このウォーキングでパリ中心部のオリエンテーションはついた。 
今回のウォーキングでいちばん困ったのは、寒いのと服用した降圧剤のせいで、頻繁に尿意をもよおすことだった。トイレの場所がわからないし、たまたま見つけても鍵が掛かっていてままならなかった。 
 どこの土地でも、土地勘をつけるためには、地図を片手に自分の足で歩いてみるのがいちばんだと思います。(地図、写真はフランス観光局のHPより)(平成18年3月11日記)