紀行

江戸・東京の祭-10
     (江戸らしい祭-3)

平野 武宏

       年末の風物詩の江戸らしいお祭りです。

[酉の市]

樋口一葉の「たけくらべ」などにも登場し、関東大震災、戦中、戦後とただ一度も切れることなく親しまれ続けた「酉の市」は11月の酉の日に開催されます。年によっては三の酉まであります。
平成26年(2014年)の一の酉は11月10日、二の酉は11月22日です。
売られるものは福を「かきこむ」意味から開運や商売繁盛にご利益があると言われる「熊手」。祭りの発祥は足立区花畑の大鷲(おおとり)神社とのこと。
寅次郎、酉の市に行くのは初めてです。1日限りの祭なので酉の市のはしご」で、まずは地元豊島区の二つの大鳥神社を訪ねました。

 大鳥神社(巣鴨)

      最寄駅 JR巣鴨駅

巣鴨駅南口からとげぬき地蔵と反対方面を歩いて行くと、バス停本駒込六丁目(大鳥神社前)の近くにありました。

      

      社殿手前の参道の両側に熊手を売るお店が並んでいます。


 大鳥神社(池袋)

     最寄駅 副都心線 雑司ヶ谷駅



前方には池袋の高層ビルが立ち並びますが、神社の前を都電荒川線が走るのどかな風景の残る場所です。鳥居の左側に熊手を売るお店 (写真右)がありました。
雑司ヶ谷の鬼子母神はすぐ近くです。寅さん歩 その4-3大江戸福めぐり雑司ヶ谷七福神を参照ください。
   


 花園神社(新宿)

     最寄駅 新宿線 新宿三丁目駅

新宿の繁華街にある派手な朱色の神社ですが、今日は熊手を売る店と露店が同じくらいの数で境内と周辺を埋め、いつもと違った光景です。
中国の方と思われる団体やバスツアーの観光客が多かったです。
寅さん歩 その9 東京の富士塚めぐりー1 新宿区を参照ください。

    


社殿へのお参りの長い列



   熊手を売る店は店名入りの提灯で位置を表示

 
大鳥神社(目黒)

      最寄駅 目黒駅

権之助坂を下った交差点にあります。バス停は大鳥神社前です。
 
 




ここでも商談がまとまり、シャン シャン シャンの手拍子が鳴り響いていました。
寅さん歩 その10 健康ご利益めぐり目黒区ー1を参照ください。
 
 
長國寺 妙見大菩薩 (浅草)

      最寄駅 竜泉バス停

バス停から浅草方面に歩き出すと、通りはお祭りムードで一杯です。
鷲神社の手前に「酉の寺 入口」と書いた長國寺がありました。
隣は鷲神社で江戸時代には同じ敷地だったとのことですが、お互いに「入口はこちら」とお客の呼び込み合戦の様相でした。




 鷲神社 (おおとり じんじゃ)(浅草)



入口では巫女さんの御祓いサービス。





       あちこちから商談成立の手締めが聞こえて来ます

 鷲神社は下町八福神めぐりのひとつで商売繁盛のご利益があります。
    
 やはり、酉の市の「おおとり」は浅草でした。(座布団1枚!)

[王子熊手市]王子神社

     最寄駅 JR王子駅


酉の日の「酉の市」とは別に王子神社では毎年12月6日に「熊手市」を開催と聞き、駆けつけました。
本殿の右側にお店があり、華やかな縁起物の熊手が並んでいます。
各地の酉の市で見たものより大きめ、支柱の竹も太い熊手が多く、福を沢山かき寄せ出来る感じがしました。
東京各地で11月に行われる「熊手市」は12月10日 埼玉氷川神社(武蔵国一宮)に引き継がれるそうですが、戦後に王子神社の氏子の熊手屋さんが呼びかけ、中間点の王子で開催日も間を取って12月6日に行われることが定着したとのことです。
寅さん歩 その3-1東京十社の初詣を参照ください。

[こぼれ話] 熊手


鳶神社の説明によると、熊手の由来は日本武尊が東夷征伐成功のお礼参りの際に社前の松に武具の熊手をかけて祝ったのが始まりとか、又農具がいつしか江戸っ子のしゃれっ気で縁起物になったとかさまざまです。
酉の市では七福神、宝船、松竹梅などできらびやかに飾られた熊手が飛ぶように売れていきます。値段は合ってないようなものだそうで、売り手と買い手が交渉し、商談がまとまれば「イヨー、シャン、シャン、シャン」と景気のいい手締めが鳴り響きます。
ちなみに値切ったうえでその分をご祝儀として置いて行くのが江戸っ子の粋だとか。
昨年求めた熊手は持参して納め、年々夢を大きくしようと昨年より大きなものを買い求めるのが習いだそうです。


次回は江戸らしい祭り-4です。


平野 寅次郎 拝