紀行

江戸・東京の祭-29
(江戸らしい祭-13)
平野 武宏

 3年前、東京に転居して始めた「寅さん歩」の寄稿が100回目となりました。継続してご愛読いただき、ありがとうございます。
「寅さん歩」100回記念のテーマは「金魚まつり」です。
東京都江戸川区は「日本三大金魚の産地」だと知りました。他の二か所は奈良県大和郡山市(山梨の甲府から国替えになった柳沢吉里の家臣が持ち込んで養殖地になった)、愛知県弥富市(大和郡山の商人が東海道を旅した際、弥富の宿場町で金魚を休まそうと池に放ったのが始まり)とのこと。
金魚の原種は中国で3世紀初めから見られ、10世紀には宮廷で観賞され、日本へは室町時代末期に大阪堺に入って来たそうです。
江戸時代初期には一部の特権階級で飼育され、中期以降、上野不忍池で金魚養殖が始まり、明治時代には本所・深川・亀戸へ養殖地が移り、江戸川区の始まりは明治30年頃だそうです。大正12年の関東大震災以降、金魚養殖は江戸川区に集中し、盛んになりましたが、昭和30年代後半から都市化の波で多くの養殖地は他県へ移転し、現在は2軒の業者が残っていますが、日本トップの品質を誇っているそうです。

 [江戸川区特産 金魚まつり] 

   最寄駅 新宿線 船堀駅からバス利用

今年で第44回の金魚まつりは平成27年(2015年)7月18日・19日行船公園で開催と知り、7月18日出向きました。大会アーチと金魚キャラクターの「えど金ちゃん」が出迎え、大勢の人で賑やかな祭りです。会場内では金魚の展示・販売(数十円~5万円)や金魚すくい、金魚飼育の備品販売、飼育相談等のテントが立ち並んでいました。
混雑して金魚の写真は上手に撮れませんでしたので、会場のポスターや配布資料からも引用しました。金魚の勉強ができ、「金魚は人間が創った芸術品で泳ぐ宝石だ」という事が良く理解できました。

               






「金魚すくい」は高校生以上1人1回のみ100円、
            中学生以下は無料
    「高級金魚すくい」は1回500円、限定500匹 1人5匹まで

会場の行船公園は紅葉も見事、自然動物園もある江戸川区の憩いの場。
寅さん歩その12 東京の紅葉・黄葉-2を参照ください。

写真下は金魚展示・即売で左は数10円、右は1,000円と3,000円


写真下は9,000円~50,000円の超高級金魚。目の保養を!


 [水元公園 葛飾区金魚展示場 ]

   最寄駅 JR常磐線 金町駅からバス利用

水元公園内に葛飾区金魚展示場があり、無料で見学できます。
入口の看板には「当場(金魚飼育地)ではリュウキン、ワキン等の優秀な親魚を作り、江戸時代から続いている伝統的な地場産業として金魚養殖産業振興に役立てています。ここでは古くから飼育されている金魚や珍しい中国産金魚を展示し、合わせてその品種改良や品質保持の試験研究を行っています」と記載。

水元公園は花菖蒲の名所。寅さん歩その11 江戸・東京の祭―25花の祭-7を参照ください。

江戸茜 江戸錦


東錦 茶金



キャリコ琉金 珍珠鱗(ちんりゅきん)


鼻房 銀魚

寅次郎、貴重な高級金魚を眺め「高級金魚はみな立派なお腹をしている!」と満足げに展示場を後にしました。

 
[COREDO 金魚の涼 IN 日本橋2015]

  最寄駅 銀座線 三越前駅

扇風機やクーラーがなかった江戸時代の涼を求めるのに、金魚は江戸っ子のお役に立っていました。江戸時代の涼み方を現代風にアレンジして風流に夏を楽しむイベントが日本橋でありました。
「ECO EDO日本橋2015~五感で楽しむ、江戸の涼~」が7月10日~9月23日まで開催、今年のテーマは金魚です。寅次郎、7月10日に訪ねてみました。
COREDO室町1の裏にある「福徳神社」の参道・仲通りが金魚柄の提灯で彩られるほか、金魚に関連したイベントがありましたが、イベント場所が分散し、建物の中で外からわかりにくい上、有料のイベントが多く、「現代の涼は金次第とはいかがなものか」とつぶやいた寅次郎です。

 

老舗の和菓子屋さんに並ぶ「金魚のお菓子」は気に入り、写真(下左右)を撮らせていただきました。入れ物の中はすべてお菓子です。


 [こぼれ話] COREDOの神様

COREDO(コレド)とはCORE EDO (江戸の中心)の意味だそうで江戸時代の五街道の出発地の日本橋にふさわしい名付けだと感心した寅次郎です。日本橋は交通の要所・商いの場なので昔から神様が祀られていましたが、周囲が近代的なビル群になった現在でも神様が鎮座していました。

 「福徳神社 芽吹神社」

  三越日本橋本店前のCOREDO室町1の裏に鎮座


由来によると貞観年間(859年~867年)には既に鎮座していたそうで、福徳村の稲荷神社として祀られ、その地名を社号としたとのことです。当時、周囲は森林や田畑で「稲荷の森」と言われ、源義家、太田道灌、徳川家康、秀忠の信仰も厚く、秀忠は参詣した際に鳥居に春の若芽が萌え出たの見て、神社の別名を「芽吹神社」と名付けたとのこと。
五穀豊穣の神様ですが、最近は「宝くじ当選祈願」が多いとか。
平成28年(2016年)には「稲荷の森」が復元されるそうです。

 「三圍神社」

日本橋三越本店屋上のライオン像の後ろに鎮座しています。


縁起によると「近江三井寺の僧源慶が隅田川牛島のほとりにある弘法大師建立の荒れ果てた小堂に立ち寄った時、その床下の壺を開けると白狐が現れ、神像の周りを三度めぐって、いずこともなく消え去ったので、この社を三圍(みめぐり)と呼ばれるようになったと伝えられています。なんでも願い事が叶う縁起の良い神として大正3年(1914年)この屋上に遷座されました」(写真上右の朱色の社)牛島の神社は三井家の守護神「三囲神社」と呼ばれています。同じ「みめぐり」と読みますが、こちらの字は中に三井の井が入っています。
写真上右の白色の社は「活動大黒」で福徳を授ける動的なお姿を現し、台所を司る神として広く崇められています。この二つの神様は「商売繁盛と幸運をもたらす神」として江戸時代より庶民に親しまれているそうです。


明治の文豪 夏目漱石の作品に越後屋呉服店、三越呉服店、三越百貨店、三越の名がたびたび登場しています。神社の左外には「漱石の越後屋」の碑がありました。


次回は江戸らしい祭-14です。
               

平野 寅次郎 拝