紀行

江戸・東京の祭-37
(江戸らしい祭-18)
平野 武宏

江戸の庶民は一年中どこかで開かれている社寺の縁日に足を運んで、神仏に祈願していたようです。その願いは様々で、目的に合わせて対象を選んだに違いありませんが、心に決めた信心の縁日が近づくと、気もそぞろになり、無事にそれを果たすことが何よりの「心の平安」(精神安定剤)であったと思われ  ます。縁日では門前で開かれる市も楽しみにしていたようです。1年の締めくくりの縁日は、「納めの○○」として歳時記に名を残しています。ウォーキング例会も12月最終回は「納めのウォーク」と言いますよね。

 
[納めの観音]浅草寺

   最寄駅 浅草駅

観音様と言えば都内最古のお寺の浅草寺。観世音菩薩は仏教の菩薩の一尊。身を三十三に変化して衆生を利益し済度すると伝わり、毎月18日が縁日でこの日に参拝すると特にご利益がある観音信仰です。12月18日納めの観音。歳の市が立ち、お正月の縁起物が売られました。
現在では日本を代表する観光名所となり、外国人も多く、毎日が縁日のようです。境内の「歳の市」は昭和25年頃からは「羽子板市」が始まり、年末の風物詩に定着しました。
    



「羽子板市」は寅さん歩 その11 江戸・東京の祭ー11(江戸らしい祭ー4)を参照ください。

 
[納めの大師]西新井大師

  最寄駅 東武大師線 大師前駅

弘法大師(空海)を信仰する大師信仰は広く庶民に広まり、真言宗のお寺では承和2年(835年)に入寂した弘法大師の忌日3月21日にちなんで毎月21日に弘法大師を供養する法会が行われる縁日が開かれ、12月21日がその年の最後の縁日として「納めの大師」と呼ばれて参拝客でにぎわいます。写真は10時頃なのでまだ混雑していない状況でした。
商売繁盛を祈願し、境内では熊手などが売られる露店が立ち並びます。




 「西新井大師」は寅さん歩 その10健康ご利益めぐり-23 足立区を参照ください。
 
 
[納めの地蔵]高岩寺

   最寄駅 JR巣鴨駅

とげぬき地蔵の名で有名な高岩寺は地蔵菩薩の地蔵信仰のお寺です。
写真下左は山門、右は本堂。苦を代わって受けてくれる身代りや子供を守るお地蔵様として「地」を司る民間信仰と深く結びついたそうです。
毎月4の日が縁日12月24日「納めの地蔵」です。ご本尊の延命地蔵菩薩は秘仏なので、残念ながら公開していませんが、そのお姿を元に作られた御影を祈願しても効果があるとされています。
 
  
本堂脇にある「洗い観音」が身代りとなり、自分の身体の痛い所を洗う人々の行列が出来ています。(写真下左)こちらが「とげぬき地蔵」と誤解している人がいるとか。縁日の商店街の露店に運命判断の易者がいるのも巣鴨らしい。


「とげぬき地蔵」は寅さん歩10 健康ご利益めぐり-25 豊島区及び寅さん歩 その11 江戸・東京の祭ー12(江戸らしい祭-5)を参照ください。 

 
[納めの不動]深川不動尊

   最寄駅 大江戸線 門前仲町駅

深川不動尊の正式名称は「成田山東京別院深川不動堂」で、千葉県成田市の成田山新勝寺の別院です。不動明王は密教特有の尊格である明王のひとつで密教の根本尊「大日如来の化身」だそうです。
成田山の不動明王を拝観したいとの江戸っ子の機運が広まり、元禄16年(1703年)第1回の成田山「出開帳」深川 富岡八幡宮の別当 永代寺で開かれました。以降も続きましたが、明治維新の神仏分離令で永代寺が廃寺となり、境内が深川公園になってしまいました。
不動尊信仰はやむことなく、明治11年(1878年)に現在地に分霊が祀られ、別院となりました 「お不動さま」の縁日は毎月28日12月28日「納めの不動」で1年間のご利益お礼と感謝の気持ちを込めて参拝し、納め札の焚きあげで1年間の守護をいただいた御護摩札や御守りを不動明王の知恵の炎の中にお返しして感謝の祈りを捧げます。

      



不動堂前の納め札の山


[こぼれ話]東京ミチテラス2015

早寝早起きの寅次郎、夜のお出かけは苦手ですが、年納めの光のお祭りは17時点灯と聞き、東京駅を訪ねました。
「ミチテラス」とは「未来を明るく照らして行こう」という意味が込められた光の祭典で12月24日~27日東京駅丸の内駅舎がスペシャルカラーでライトアップされます。行幸通りの木々や路面にも特別な光の演出が施されます。
写真下右は関連イベントとして開催の丸の内仲通り「丸の内イルミネーション」です。シャンパンゴールドは丸の内のオリジナルカラーとのこと。



                       
これにて、平成27年(2015年)の「寅さん歩」も納めです。
一年間ご愛読いただき、誠にありがとうございました。

皆様、良いお年をお迎えください!

次回は江戸らしい祭-19です。。


平野 寅次郎 拝