紀行

江戸・東京の祭-49
(新しい祭-10)

平野 武宏

 [浅見光彦ミステリーウォーク2016]

東京都北区出身の作家 内田康夫さんの小説の主人公 名探偵★浅見光彦が住む街を舞台としたウォーキングイベントです。
北区西が原東地区自治会連合会の実行委員会主催、北区が後援2016年(平成28年)5月13日~29日開催、今年で17回目。例年、全国からファンも含めた約3万人が参加する地域密着型の歩くお祭りです。平成28年度東京都「地域の底力再生事業」助成対象事業にもなっています。
   
参加者はJR駒込駅や霜降商店街の店や飛鳥山などで無料配布の「ミステリー手帖」(写真下左 21ページの冊子)を入手し、手帖に書かれた短編ミステリー小説や商店街の地図を頼りに小説の文章の○○部分や店先などに掲示の答えを手帖の穴埋めパズル(写真下右 18問あり)を解きます。解答用紙の縦の太枠が文章となります。解答用紙を切り取り、応募すると正解者に抽選で内田さんの著書やグッズ・地元商品などが当たります。

       

寅次郎、昨年も参加し、要領は分かっていましたが、昨年、途中で答えを見落とし、コースを戻った苦い経験を思い出し、今年は見落としをしないようにと意気込んで、駒込駅をスタートしました。手帖を開けると最初のページには内田康夫と浅見光彦のプロフィールが記載されています。

    

内田康夫氏は1934年(昭和9年)北区に生まれ、1980年(昭和55年)文壇デビュー、2008年(平成20年)日本ミステリー文学大賞受賞。東京都北区を舞台にした「浅見光彦シリーズ」は好評でサスペンスシリーズとしてTV放映されています。
    
小説の主人公 浅見光彦氏は北区在住の「旅と歴史」のルポライター、取材先で事件に遭遇すると正義感から真相解明に乗り出す探偵好き。兄は警察庁刑事局長で取材先の警察署で身元調査され兄が判明し、警察署から手のひらを返した、おもてなしを受けるのが、いつものパターン。33歳の独身で独立できず兄一家に居候状態。好青年だが女性の前では煮え切れなく、結婚が母や兄の心配の種。
    
今年の手帖の短編ミステリー小説名は「セピア色の想い出を探して」篇で、「プロローグ」、「王子駅付近」、「上中里駅付近」、「田端高台通り付近」、「駒込駅付近」、「商店街付近」、「エピローグ」の構成です。各章の内容のポイントを紹介します。

「プロローグ」
親友がフリーマーケットで買った雑誌から古い写真入りの封筒が見つかり、名探偵の誉れ高い光彦に持ち主探しの依頼をする。家に帰ると母から近所の写真では言われ、日頃は探偵ごっこと批判している母からも探偵したらと追い立てられる。 

「駒込駅付近」
駒込駅からスタートの寅次郎、この章から読み、捜査を開始しました。すぐに文章は、老舗洋菓子店「アルプス洋菓子店」の入口には昭和モダンを感じさせる丸い②○○○○が立っているとあります。現物を見て解答用紙②の枠に「かんばん」と書きます。すぐ先のカメラ店の窓ガラスには⑭の答えが掲示。
このように答えは順不同で出て来ます。立ち止まり文章を読み、きょろきょろしながら進みます。
    
「商店街付近」
少し行くと、昔の雰囲気を残す霜降商店街入口です。ここは商店街の地図を見ながら、マークの場所に行くと答えが掲示されています。マークは多いですが、同業種の店は同じ答えでした。

  

答えの掲示位置はさまざまで、しーちゃんコミニュティサロン(しーちゃんは霜降り商店街のキャラクター)では室内壁の掲示物の中に答えが掲示(写真下右)

        


店の正面に掲示で、すぐ見つかる答え、店の右脇や下にある答えと手が込んでいますが、見つけやすく2枚も掲示の親切心もあり。




「王子駅付近」
手帖には王子駅近くの飛鳥山公園の三つの博物館(紙の博物館、渋沢史料館、北区飛鳥山博物館)で、ヒントを探せと記載あり。
飛鳥山公園は第8代将軍徳川吉宗が故郷紀州に似た場所として、桜を植えて江戸庶民のお花見の場所とした地、日本の近代経済社会の基礎を築いた実業家 渋沢栄一の自邸があった地です。
各博物館の入口に答えの掲示あり。その後、文章に従い、本郷通りを駒込方向に進むと、西ヶ原一里塚(写真下左 日光御成道で日本橋から二番目の一里塚)を過ぎた滝野川警察署でヒントを探せとあり、警察署前の掲示板(写真下右)の中に答えがあり。

  

[上中里駅付近]
親友が一緒に探したいから、「捜査の時は連絡を」と言われたことを思い出し、連絡すると「平塚亭」で待つとの返事あり。平塚亭は源義家ゆかりの古社の平塚神社参道脇にある和菓子屋。ここの「みたらし団子」は母の好物で光彦は母のご機嫌取りに決まって買って帰ることにしています。待ち合わせの親友は用事が出来たと美人の妹をよこしていました。光彦は彼女と一緒に捜査することにしました。平塚亭(写真下左)のみたらし団子は行列であきらめ、ヒントがあると記載の「平塚神社」(写真下右)にお参りした寅次郎でした。

  

[田端高台通り付近]
 コース脇にあり、春のバラフェスティバルで賑わう「旧古河庭園」(写真下左)に立ち寄りました。バラが見頃でした。文章は田端高台通りを進んで、井戸水と備長炭を使用している銭湯の成分⑥○○○○を探せとあります。写真下右の「殿上湯」入口の右の看板の文章に答えが記載。

    

この先で細い道から解放され、景色に広い空が見えました。
(この光景が「立て枠の答え」と最後にわかりました)
さらに進むと「やまがた育英会駒込学生会館」にある石碑の揮毫の旧庄内藩の当代当主⑱○○○忠久(写真下左の朱印)、脇を走る東京の大動脈⑮○○○○線にある珍しい踏切、こだわり野菜自動販売機の⑫○○○○くんという愛称を探せとあり。表示は小さくて苦労しましたが、面白いヒントだと感心した寅次郎です。

      

 
もうゴールの駒込駅のすぐ近くまで来ていました。答え探しに少し苦労しましたが、約2時間半の楽しいミステリ-ウォークでした。

[エピローグ]
捜査から戻った光彦は自宅で写真を挟んで親友と対峙しました。
「この写真の持ち主はお前のお母さんだろう。まんまとだまされた」どうやら光彦の母も協力して美人の妹と引き合わせようと仕組んだのでした。でも妹さんも出版社勤務で今の仕事に楽しくて、結婚はまだ考えていず、光彦の結婚は又お預けです。


[こぼれ話]飛鳥山 三博物館

「渋沢史料館」(写真右)渋沢栄一の91年に及ぶ生涯と関係した500に上る様々な事業、多くの人との交流等を示す諸資料が展示。その事業の多さ・範囲の広さに驚いた寅次郎です。
飛鳥山公園の一角は始めは別荘とて、後に本邸としたそうです。
「晩香蘆」(写真下左)は迎賓館として諸国の要人も訪れています。
「青淵文庫」(写真下右)も同一焼失を免れた二つの建物は国の重要文化財で、渋沢史料館の入場券で入ることが出来ます。

  




「紙の博物館」(写真上左)は我国の洋紙発祥の地である王子に設立した世界有数の紙専門の博物館です。渋沢栄一も事業に関わり、明治26年(1893年)王子製紙会長に就任しています。寅次郎、紙すき教室でしおりを作成したこともあります。
「北区飛鳥山博物館」(写真上右)は北区の歴史や自然、文化をテーマごとに展示。飛鳥山から出土した土器や近くの中里貝塚の標本、江戸時代の花見弁当の再現等、昔の暮らしを実感できます。アートギャラリーもあり、北区所有の美術工芸品の展示あり。

寅さん歩 その8-1 東京発祥之地めぐり~産業・商業編~1-2、その10 健康ご利益めぐり―30 北区、その11 江戸・東京の祭-23(花の祭-6)を参照ください。


[寄り道]平塚亭 みたらし団子



後日、訪問しました。出来立てで柔らかく美味しかったです。1本140円。TV放映では光彦と母が店外脇の赤絨毯の椅子で食べていますが、お店の人に聞くと「あれはTV局の人が持って来るセット」とのこと。

次回は 江戸・東京の祭-50です。


平野 寅次郎 拝