寄り道、道草2
局便郵瀬片
  アイランドコースを時計回りに歩き片瀬目白山から江ノ島道に出ると本蓮寺、常立寺と古刹が続く。左手前方にモノレールの軌道が見え、やがて道はY字形に分かれる。その分岐点には「江の島弁財天道標」が立っている。黒光りしていて判読出来にくいが、案内板によると「この道標は江戸時代中期の建立、三面に『従是右江嶋道 左龍口道 願主 江戸糀町』の銘がある」という。

  
 だがこの道標よりも右側に建っている二階建ての石造りの郵便局に目が奪われてしまう。建物のテッペンには〒の字のマーク、局名が右書きで「局便郵瀬片」と刻み込まれ建物が戦前に建てられたものであることが判る。用事は無いがもとより閑人、中に入って見ることにした。石段を上がって扉を押して中へ入ると、うーん、狭い、窓口が三つあって若い男の局員が老人のお客(こちらも老人なのだが)の接客をしていた。ATMやCDなどはなく、昔のまま、なぜか懐かしささえ感ずる郵便局の屋内であった。
 
「なにか御用ですか」と若い局員が尋ねた。最近の郵便局員は銀行員より応対が丁寧で慇懃さがない。「いや、外からはいつも眺めてはいましたが、一度中を見たかっただけです」「この局舎は昭和5年に建てられたものですから、73年にもなります。記念にスタンプなど押して行かれてはいかがですか」と商売も熱心である。葉書を2枚買いスタンプを押捺してもらった。そばで会話を聞いていた話好きと思われるオバチャンが、「ここの郵便局は藤沢で唯一機械(ATMのこと)がないんです。設置するためには建物を立て替えなければならぬそうですが、私は建物を残してもらった方が良いと思うんです」なるほどそんな事情もあったのか。利便性と建物の保存との折り合いは難しい。ましてや特定郵便局の建物は個人の所有、お金も掛かる問題でもある。

   ところで、ウォーカーのみなさん、一度、郵便局に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。子供の頃のなぜか懐かしい、温かさを感じます。そして、記念にスタンプを押してもらってはいかがでしょうか。

写真 右上:江戸時代中期に建立された「江嶋道道標」  左下:こちらは歴史的建造物のような築73年の片瀬郵便局
(10・9 八柳
      
 
     『片瀬郵便局は平成18年9月を以て廃止され、残念ながら取り壊されました』 平成18年10月19日