寄り道・道草 20
普段、奥田公園からスタートし奥田公園に戻って来る「江の島道」、本来は東海道藤沢宿遊行寺橋から分かれて、石上から渡しで片瀬川を渡り、片瀬丘陵沿いに州鼻通りを経て江の島へ渡る一里九丁(約4キロ)の道のりであった。
盲目の鍼医、杉山検校(けんぎょう、1610~1694)は、江の島弁才天の熱心な信者で元禄2年(1689)に「江の島道標」を48基建てた。
このうち次の12基が藤沢市の重要文化財に指定されている。
市役所構内2基、なぎさ事務所前(片瀬海岸)、白旗神社境内(藤沢)、遊行通り3丁目ロータリー内、法照寺境内(鵠沼神明)、片瀬小学校門脇、密蔵寺向かい辻(片瀬)、片瀬市民センター構内、西行もどり松脇(片瀬)、片瀬郵便局向かい、江の島神社境内福石脇、各1基である。このうち5基(太字)はアイランドコースで目にすることができる。
さて、48基のうち、4分の3の36基の行方はどうなったのであろうか。少なくとも基点となる遊行寺付近の道標の行方が気になっていた。
最近になって、遊行寺内に「江の島道標」があることを知った。藤沢市郷土史家、平野 雅道さんの「東海道五十三次 藤沢宿史跡ガイドブック」の中に、「遊行寺内真徳寺の庭内に『江ノ島道標』がある」という記述を見つけた。真徳寺は遊行寺黒門から入り、いろは坂の中腹、右手の朱塗りの門を入った所にある。通称、赤門真徳寺、東大に入れなくても誰でも入れる赤門だ。
平野さんによると、「庭内に杉山検校の道標があるが、小さく見落としやすい」という。境内に入ってうろうろしていると、怪しいと思われたのが、若い坊さんが出て来た。機先を制して、こちらからお尋ねすると、「ここにありますよ」と親切に案内してくれた。なるほど、小さい、というより上部の「ソ」という梵字と「ゑ」という字しか見えず、それから下の文字は土に埋まっている。「上部だけで切断されたものが持ち込まれたようです」といって、周りの草をより分けてくれ、写真を撮った。
平野さんの本によれば、「一説には遊行寺橋の架橋工事に出土し砂山観音にあったものというが真偽のほどはわからない」という。
(参考資料:「東海道五十三次 藤沢宿史跡ガイドブック」 平野雅道、 「江の島弁才天道標」 藤沢市教育委員会 7・7 八柳)