江戸時代、盲目の鍼灸師であった杉山検校が、江の島弁財天参詣者が道に迷わぬように建てたという道標は48基あったといわれる。いずれも火成岩製、同型同大で高さ120cm、各面幅20cmの尖頭角柱形で、四面のうち三面に「一切衆生」「ゑのしまみち」「二世安楽」と刻んである。ただし、西行もどり松脇の道標の1基だけは四面に「西行もどり松」と刻みつけられていることは先に述べた。(寄り道10参照)
道標を兼ねて、道中する一切衆生(この世に生きているすべてのもの)の現世および来世の安楽を祈念した造立者の温情がしのばれると、各道標の横に建てられた藤沢市教育委員会の案内板には書かれている。
現在、11基の江の島弁財天道標が藤沢市の重要文化財に指定されている。
その11基とは、市役所構内3基、白旗神社境内、遊行通り3丁目ロータリー内、法照寺境内(鵠沼神明)、片瀬小学校校門脇、密蔵寺向かい辻(片瀬)、片瀬市民センター構内、西行もどり松脇(片瀬)、江の島神社境内福石脇の各1基、合計11基である。
このうち白旗神社境内、鵠沼神明の法照寺境内の道標は、いわゆる江の島道から外れており、市役所構内の3基は元々他の場所に建てられていたものが、道路工事などによって移設されたものである。
晩秋の小春日和の日、法照寺を訪ねてみた。法照寺はリバーサイドコース、時計周りで、高山橋から東海道線線路沿いの道を藤沢駅に向かって歩く。二度目の信号、日本精工用地と神明商事ビルとの間の道を皇大神宮の方へ向かう。
左側にY園芸の温室6棟が続き、最初の道を左に20mも歩くと小さなお寺、法照寺(浄土宗)がある。赤い鳥居と一本の松ノ木、その根元に江の島弁財天道標が斜めになって立っていた。そして背後に庚申塔が10基ほど立っていた。
ほんとうに小さなお寺で、このほか見るべきものはなかった。
だが、Y園芸の温室内のシクラメンは、白、ピンク、深紅の花が咲き乱れてクリスマスの出荷を待っていました。一寸、寄り道をして覗いて見るのもよいでしょう。(11・24 八柳)
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