第8話
競歩とは

陸上競技種目に歩く競争競技「競歩」があるのをご存知ですか。ウォーキングの例会に参加の折、参加者の間で「ウォーキング」と「競歩」について話されているのを耳にしますが、競歩競技を誤解されたまま話題にされているようで、元競技者として大変気しているところです。私なりに整理して、理解を深めていただきたく投稿させていただくことにいたしました。

 スポーツ種目を日本語で表現するか、外国語で表現するか、これが誤解を招く原因になっているところもあります。「卓球とピンポン」「野球とベースボール」「蹴球とサッカー」は同一スポーツとして容易に理解されていますが、「ジョギングやランニングとマラソン」が同一のものと誤解され、また「競歩とウォーキング」は別のものと考えている人が予想以上に多いようです。

マラソンは42.195 kmを走る競技の固有の名称で、規定距離でないロードレース、駅伝をマラソンと表現するのは間違いです。ジョギングやランニングはマラソン、ロードレース、駅伝など競走を表現するものでなく、準備運動や整理運動、トレーニング時の走りを総称して表現しています。

「競歩」とは=ウォーキング・レース。
「競歩」は「歩く速さを競う競技」で、誰もが日常生活で歩いている歩きの速度を極限まで上げて競う競技、日常の歩き(ウォーキング)の延長線上にある陸上競技の競技種目です。

歩く=ウォーキングを、一般には何故かウォーキング・レースを競歩と云い、一般の歩きをウォーキングと表現することが日常的となり、現在のような解釈が定着したように思います。「競歩」と言えば速そうに聞こえ、ウォーキング言えばゆっくり歩くような印象を与えているように感じるのは、競歩競技が日本では馴染みが薄く普及が遅れている競技を物語っていようにも感じています。 * 競歩競技=「歩くスピードを競う陸上競技の種目」です。日本陸上競技連盟規則では、「競歩は、いずれかの足が常に地面から離れないようにして前進することをいう」と定義しており、現在、国の内外を問わず国際ルールとして競技中の歩行違反の歩形判定を次の2項目で行っています。

リフティング = 両足が地面から離れる。
ベント・ニー = 競技中に膝がまがること。

(私が競技をやっていました40数年前は、判定項目が10項目ほどあり細かくチェックされていましたが、競技条件の整備改善が進み現在の2項目での判定が行われるようになりました) 競技は競技者の歩形を競歩競技専門の競歩審判員が監視して、違反の疑いのある者には注意(2回目は失格)、違反者は即時失格と判定することになっています。ゴールした後も競技中の反則で失格することのある厳しい競技と云えます。国際競技でも同様で、ローカルルールの存在しない競技です。通常の反則判定のための確認ポイントは10項目ほどありますが、常に競歩競技の定義を犯す恐れがない状態を保つことが求められ、競技者は日常生活での歩行においても姿勢や歩行に関心を持って学習することが求められていると云えます。

「競歩競技は日常生活の歩行を競技化したもの」で特別なものではないことをご理解いただければと思います。                            (つづく)