競技生活からの得たもの   (4)

                                             江尻忠正
 精神的な負荷で潰れない身体を鍛え、トレーニングの積み重ねで競技の環境で左右されない精神力を養うことが個人競技では大切なことです。一流と云われる競技者にとって、トレーニングは自己能力の限界に近い負荷を掛けた状態の繰り返しであり、常に故障や古傷の後遺症と背中合わせの状態が日常です。

 相手に負けない精神力は、自分に負けない精神力を養成することであり、どんな過酷な状態でもそれに耐えうる訓練を課す心掛けが大切と考えています。常に体験や経験の機会を自らつくり、訓練の積み上げで自分自身を鍛えることが大切と考え、眠らない、食べない、立ちっぱなし、さらに騒音の中で、しかも明るい場所でも眠るなど自分で悪条件を克服するように努めることも大切なトレーニングとなります。
 私の経験では身体が不調の時の方が、好調な時よりも多いと思います。不調時に最大限の成果を上げる工夫も欠かせないことです。不調だからとおどおどすることなく日頃の体験を活かすことが重要と考えていました。個々人のノウハウを最大限に活かすには、常に冷静な判断を伴う精神力が大切と云えます。

 競技中に突然極限状態に陥ることがあります。精神力の強化で肉体的な境地を脱し負荷の軽減をはかることは可能と思っています。「身体の健康は、精神の健康に支えられているように感じています」
 競技者すべてが同じではないことを認知することが困難な条件を克服する大切な用件であると思っています。
 
 心にゆとりをどんなに厳しいトレーニングにも「遊び心」を大切にすることが必要と思っています。心にゆとりがなくなったとき、肉体的な疲労は格段に大きいと感じました。「誰でも」「何時でも」「何処でも」「何時までも」どんな条件下でも肉体的な癒しとともに精神的な豊かさや癒しを大切にすることが、疲労回復を早めることに繋がると感じています。

 競技生活を長期間続けるためには「小さな感動の積み上げ」と「新しい発見を大切にする」ことが自分に与えられた環境に順応して行く秘訣と考えています。競技スポーツを卒業したいま、健康ウォークで心掛けたいことを述べ、締めくくりたいと思います。

 個性を活かした「楽に、楽しく、より美しく」が大切と思っています。人真似や人とのペースでの行動は、心身ともに疲労を感じ、やる気をなくしてしまいます。歩く気持ちや体力は、個人差がありお互いに認め合うことが楽しい仲間づくりに大切と思っています。20年近い競技生活で予想以上の身体的な障害や後遺症が残り、これらの障害と永い付き合いがこれからも続くと考えられますが、さらなる障害や後遺症が生じないように心がけたいと思っています。

 諺に「過去と他人は変えるることは出来ないが、未来と自分は変えることができる」とあります。年齢や体調に併せて自分自身を変えることが大切だと思っています。(完)