連載
― 寅さん映画とウオーキング ―
黒江 輝雄 国民的大映画スター、車寅次郎こと渥美清が亡くなってからすでに10年になりますが、寅さん映画は依然として人気が衰えません。テレビやビデオ、雑誌などで、今でも寅さんの特長ある顔をよく見かけます。人気の秘密はいろいろあるでしょう。
まずは、毎回登場する新しいマドンナとの失恋続きのラブロマンスや、柴又のおいちゃん宅でのさくらや博、タコ社長との“討論会”などなど話題は豊富でいつも観客を笑わせます。
もうひとつ忘れてならないのは、寅さんが失恋や討論会に負けて、一人淋しく旅に出るシーンです。
例の茶色いカバンをさげて、地方の人通りの少ない道路をトボトボと歩く後姿とか、列車内でのお客さんとの会話や、車窓から流れる外の景色などから寅さんの旅先がどこなのかは、いちいちナレーションでの説明はありませんが、音楽の流れている中で、そこがどこなのかが判るようになっています。
映画では毎回ほんの数カットにしか過ぎませんが、私にとって、これらの情景が、私たちのウオーキングと、どういう訳か重なって見えてきます、全国的に名前のよく知られた景勝地や温泉場などに、寅さんはよく出没します。全国各地を回っているウオ―カーの先輩諸兄にとって、寅さん映画のこのようなシーンは見覚えのある場所のはずです。「あゝ、この場所は一昨年のツーデーマーチで訪れた所だった」などとなつかしく思い出されることでしょう。まるで、自分が寅次郎本人になったような気分になるはずです。
旅に出ることは寅さんにとって、旅先での新しいロマンスを見つけるきっかけになったり、“社長兼営業部長”として青空市場で営業活動をやったりしています。
そういえば、あの飛行機嫌いの寅さんが、わざわざウイーンにまで出張する物語もありました。
私たちのウオーキング仲間でも、ヨーロッパや世界各地を回りながら、歩き方を実践されている方々が大勢いらっしゃいます。
全国各地や外国のウオークで、寅さんと同じ想いを持たれた方も大勢いらっしゃるのではないでしょうか。
そういった面からも、寅さん映画の人気の秘密があるのだろうなあと、勝手に想像しています。