連載


― 座右の銘 ― 
黒江 輝雄
 “座右の銘”とは静かに座禅などを組みながら無念夢想の境地の中でひらめく言葉でしょうから、動きのあるウオーキングの話題には似つかわしくないような気もしますが、・・・・。

 私には今までに2つの座右の銘があります。
その一つは、子供の頃父の居間には「敬天愛人」と書かれた大きな額がかかげてありました。ご存知のとおり鹿児島出身の西郷隆盛(南州)の書です。
座敷の床の間には時折、「子孫の為に美田を残さず・・・」という掛軸がかかっていました。これも同じく西郷さんの書です。父からは何も聞いたことはありませんでしたが、きっと同郷の先輩を誇りに思っていたはずです。
私も何度か鹿児島を訪れましたが、一度は西郷南州顕彰館で「敬天愛人」の色紙を買い求めました。この色紙は、今でも私の本棚の中に飾ってあります。まるで4字熟語みたいに簡潔な言葉ですが、私にとっては、人のあるべき道を説いた名言だと思っています。

 もう一つは、昨年ウオーキングの師匠格の方から、「人は夢を持って歩き続ける限り余生はいらない」
という言葉を教えてもらいました。これは国土地理院とウオーキングの大先輩、伊能忠敬の言葉だそうです。この言葉が私にとっては、妙に心に残る味わい深いものとなりました。私の机の脇の壁には、この言葉を書いた紙が貼ってあります。机に坐るたびにこの言葉が目に入ります。
「毎日毎日を精一杯、悔いを残さないように頑張ることが大切である。」と教え諭されているように思えます。
人生をウオーキングになぞらえているところが、私にとってはとても魅力的なひと言です。ウオーキングの途中でも、このフレーズがふと頭の中をよぎることがあります。