紀行文

池 内 淑 皓
2007年夏スイスを歩いた。
ベルーナオーバーラント地方のグリンデルワルトに一週間滞在して、アイガー北壁の真下を散歩したり、高山植物が咲き乱れるハイキングコースのウオークを楽しみ、更にツェルマットに宿を移してマッターホルン山麓をトレッキングした。基本的にスイスは「地球の歩き方スイス」のガイドブック(ダイヤモンド社)を持っていれば、個人で旅行ができる。
 日本からスイスへはスイス航空の直行便が毎日一便飛んでいる。チケットは3ヶ月位前であれば18万円ほどで手に入る。出入国もパスポートを見せるだけで入国出来た。
列車も日本からインターネットで時刻表がプリントアウト出来るし、スイス国内の主要鉄道がフリーパスとなるスイスパスも日本国内で購入出来る。物価の高いのが難点であるが、治安も、飲料水も問題無く、ここを訪れる人のマナーも良い。
 成田を午前10時25分発チューリッヒ行きに乗ると佐渡、シベリアの上空を通って現地時間で15時55分に着く。そのまま特急列車に乗りベルン、インターラーケンオスト乗り継ぎで、グリンデルワルトにはまだ日も明るい19時54分頃に着く(時差7時間)。
スイスは北緯47度に位置し、夏は22時頃まで明るい。

グリンデルワルドの町並

 夏のベルーナオーバーラント地方は3〜4日程の周期で天気が変わるから、晴れている日を狙って快適なウオーキングが出来る。無料のコース地図は地元の書店や、駅、観光案内所などで容易に入れる事が出来るから心配いらない。地図にはコース概要説明(日本語の表記もある)と、ウオークの難易度と所要時間が表示されている。
 各種のウオーキングコース(トレイルと記述されている)には道標にも難易度が示されているからは初めてのウオーカーでも分かりやすい。
黄色の表示は一般向けで、家族でウオーク出来るコース。道標の先端に白と赤と白の表示
があれば、健脚向きまたは防寒具、丈夫な靴が必要とされるコース。青色の点線が表示さ
れていれば、熟達者の登山コースとなる。道標はコースの要所々に設置され、道に迷うことはない。 
道標
シュレックホーン、アイガー、ユングフラウ等4000m級の山々や氷河を目の辺りにしながら終日歩ける、とっておきのトレイルを紹介して見よう。

 グリンデルワルドバスターミナルからバスでグローセシャイディックにゆく(40分)標高1961mの終点でバスを降りると、そこはのんびりと牛が草を食む草原のただ中である。
グローセシャイディック 右の山はアイガー


ここからフィルスト(First)まで約2時間、ゆるやかに山裾を巡る家族向きコース。グリンデルワルドの谷を挟んでウエッターホーン(3701m)、シュレックホーン(4078m)の銀嶺とその山間から流下しているグリンデルワルド氷河が目前に迫り、右前方にはアイガー北壁が視野に入ってくる。
 トレイルの両側には草原が広がり、7月下旬でも高嶺の花が咲き乱れ、その高山植物を家畜達が遠慮無く食べている。ロープウエーの索道が見えてくると、程なくフィルスト(2168m)に着く。フィルストはグリンデルワルトの町からここまでロープウエーが運行されているから、団体の観光客は町から一気にここまで来て、レストランでお茶を飲んで、アルプスの景観を楽しんで帰ってゆく。
 トレイルはさらに続く。30分ほど歩くとバッハアルプゼーと言う池畔に着く。池の水も大気も清澄そのものであるから、正面の山々が湖水にそのまま転写される。池の畔には赤、紫、黄の高山植物が咲き乱れている。ランチボックスを開き、逆さアイガーを見ながらの昼は贅沢過ぎる一時だ。

アイガーを見ながらトレイルを行く
 日は高いから更に足を延ばそう。今度は一転岩山の登降が始まる。岩稜帯に咲く高山植物をゆっくり鑑賞しながらゆっくり歩く、日本の北アルプスに咲く花達とはまた違った美しさがある。
 ロートホルンの山裾を回り込むとブスアルプ(Bussalp)(1792m)に着く。今度はアイガー北壁が目の前に迫ってくる絶景となる。
最高に見晴らしの良いところにレストランがあり、ここからグリンデルワルドに帰るバスの発着所ともなっている。
日が山の端に没するまで、スイス特産のチーズ盛り合わせと、アイガーをつまみにワインを傾ける。至福のひとときである。