紀行文

モンゴルを歩く

(1)

2006年8月5日〜8月19日の記録
池 内 淑 皓
        

  2006年(H18)8月モンゴルの首都ウランバートルから西へ600km、ハンガイ山脈の麓アルハンガイ県チョロート郡ハイルハンにある遊牧民の「ゲル」(中国ではパオ)と言う住宅にホームステーし、遊牧民の生活を体験した。

 始めにモンゴル国について紹介しよう
 モンゴルの国旗:色は繁栄を表す火の赤と、平和と永遠を表す空の青。左側の黄色い図案は「ソヨンボ」と呼ばれ、国家を象徴している。上から未来に向かって発展してゆく炎、丸は太陽、三日月は父なる天(テングリ)に対する崇拝の象徴、三角は敵を倒す槍、長方形は誠実を表す。真ん中の巴形の図案は目を閉じない魚で、陰陽の調和を示す。左右の長い棒は城壁を意味する。

 モンゴルは中国の内蒙古の北、北緯41度、ロシア バイカル湖の南、北緯52度の間に位置しており、中国とロシアに囲まれている。
首都ウランバートルは北緯48度(北海道稚内と同緯度)に位置している。標高は1,350m。夏季の平均気温は17度、冬季は平均マイナス22度以下にもなる。
国土の大きさは東西約2,392km、南北約1,259km、面積は日本の約4倍(156万7千ku)、人口は約270万人(大阪市と同じ)で首都ウランバートルに全人口の約40%が集中している(2008年統計)。
 紀元500年頃のモンゴルは、「勾奴(きょうど)」と呼ばれ、小さな遊牧部族の一つに過ぎず、中央アジアのど真ん中の高原で、孤立して暮らしていた。西にはアルタイ山脈と天山山脈、北はシベリアのツンドラ地帯である。 南方はゴビ砂漠が広がり、モンゴル平原は天然の障壁に囲まれていて、これが何世紀にもわたって他国の侵略から守られてきた。
 モンゴル平原は海抜およそ1,200mで、極端な大陸性気候の変化に曝されている。夏は30度を越え、冬は−40度にも達する。11月が来ると総ての川、湖も完全に凍ってしまい、4月まで動くものは何もない。

 夏になると、一転気持ちの良い草がカーペットのように大地を覆う。まるでビリヤードテーブルの様な景観に変わる。 しかし今は地球温暖化の影響で砂漠化が少しずつ進んでいる。草に元気がないのだ。大地が乾きつつあると云う。
政治体制は議会制民主主義であるが、社会主義の気風が未だ色濃く残っている。
モンゴルは1924年以降ソ連の影響を強く受け、社会主義が導入されていたからである。
2009年現在大統領は、ツアアヒアギーン エクベクドルジ氏、首相はスフバタールイーンバドボルド氏。
民族はハルハ族約75%、カザフ族6%、他少数民族となっている。言語はモンゴル語であるが、標記はロシアのキリル文字になっている。独特の縦書きモンゴル文字は、内蒙古自治区に残っている。この地は1634年満州族によって支配されてしまった(現中国領土)。
宗教はチベット仏教が広く崇拝されている。インドで生まれた大乗仏教は、ネパール、ブータン、チベット、敦煌を経てモンゴルに入る。西部のバヤンウルギー県では、イスラム教が浸透している。
経済:この国にも発展途上国特有の“汚職と賄賂”が横行していると聞く。貧困、無力感、実効性のない施策、弱い開発計画からなかなか脱却出来ないのだ。

通貨:Tg(トウグリク)100円=1,500Tg(2009年6月)
1,5,10、20、50、100、500、1000、5000、1万Tgの紙幣 写真は上から20、50,100Tg
 
 輸出構成(2006年統計値)
ビジネスチャンスのある部分は、既にロシア、中国、韓国の企業に浸食されつつある。
主要な輸出品目は鉱物資源で、銅、金、モリブデン鉱、石油と豊富な地下資源があるが、開発技術が弱く、今この地下資源を巡って各国が熾烈な獲得競争を行っている。
特にウランは、旧ソ連が冷戦時代シベリア鉄道路線から、ドルノド県のチョイバルサンまで鉄道を引き、ここにソ連軍の大規模な基地を設けてウラン鉱石を採取していた。モンゴル国にはウランであることを秘密にしていたと言う。
 現在日本に進出して欲しい分野は石油、カシミヤを含めた家畜製品、特にこの分野は日本の高度な科学技術が必要であると云う。また観光開発も期待している。
貿易相手国は、中国、米国、ロシア、韓国、日本となっている。
日本との関わりは、2006年以降かなり緊密になってきた。特に南ゴビ地方の鉱物資源開発が注目を浴びている。2009年日本の商社はウラン鉱の探索に着手した。日本は対モンゴル支援に対して最大援助供与国になっているのだ。平成七年阪神淡路大地震に際して、モンゴル政府から毛布2,010枚、手袋500組が送られた出来事は、私達の記憶に新しい。
 住居はウランバートル、ダルハン、チョイル等大きな町ではマンション、アパート、個人住宅が普及しているが、大部分の人達は「ゲル」と言う遊牧民のテントに住んでいる。有史以前から住んでいるゲルは、モンゴル人にとってかけがえのない住まいであるという。
気質はさすがにチンギスハーンの末裔だけあって、気が強く、勝ち気で、プライドが高い、朝青龍はその典型的な見本であろう。(つづく)