連載 (1)
黒江 輝雄
相模の国からお江戸まで毎日、上り下りを「駕篭」に乗ってお勤めに励んでいた私がお役ご免になったのは、十年ほど前のことでした。
・・・今年の初めに、歩き方組頭格の方のご紹介で、私も仲間に入れてもらい、手取り足取りいろいろと教えてもらっています。草鞋の選び方、はき方にはじまって脚半や蓑のことなども指南してもらいました。
今では病みつきになってしまい月のうち五、六回は足を運んでいます。私はまだ、相模の国をうろうろするだけですが、この兄貴分は、諸国漫遊を重ねていて、近々四十七都道府県の交通手形をもらえそうだとか云っていました。・・・
ほんの「駆け出し」に過ぎない舎弟の私ですが、せめて関八州分のお墨付きはもらえるように努力したいと思っています。
長いこと「脾肉の嘆」をかこって、膝が泣くこともありましたが、お陰様で今では膝が笑い出すようになり、歩き方を催促するようになりました。暦をめくりながら、次の旅立ちのことを考える毎日を送っています。― つづく ―