連載


 ― 交通事故 (前編)   ―
黒江 輝雄
  <交通事故>とは何も車と人間との間に起こった事故ばかりではありません。
天下の公道を歩いていて、ふりかかってきた災難はすべてが<交通事故>といえるのではないでしょうか。
これからお話しする私の体験はそのような類の<交通事故>です。・・・・・

 いまから10年程前のことです。私の住んでいる所のすぐ近くに藤沢市が運営管理している大きな墓園があります。今風にいえばメモリアル・パークというのでしょうか。なかなか手入れも良く行き届いている墓所です。和洋折衷の趣もあるところで、極論すると青山墓地とワシントンにあるアーリントン墓地とがコンパクトに一緒になったような感じさえします。四季を通じて季節、季節を感じさせる木々が道路に植えられていて人々を楽しませてくれます。その道路は車が自由に往来できる2車線で両側には立派な歩道もあります。道路は縦横にはりめぐらされていて一周すると4,50分はかかります。
 
 私はその頃毎朝、6時ごろには家を出てこの墓園を散歩するのを日課にしていました。毎日顔を合わせる歩き仲間も7,8人はいました。一週間も逢わない人がいると、あの人は最近どうしたのだろうなあと気になることもありました。歩いていていろいろなものを見かけることもあります。
藤沢市の名誉市民第1号で戦後まもなく総理大臣をされた片山哲氏ご夫妻の墓石を偶然みつけました。ご夫妻は戦前からのクリスチャンでお墓の前には開かれた聖書をかたどった石が置かれています。ご夫妻とも93才の天寿を全うされたと碑には彫られてあります。お墓には絶えず新しい花々が供えられています。

余談ですが、、私もこの墓園の一画を申し込んでから30年になります。毎年使用料は納めていますが、幸いな事に(?)手つかずのままです。

 前置きが長くなりました。
やがて夏場が近づく頃のある朝<交通事故>は起こりました。
その詳細については後編でご報告します。・・・・・・