紀行文
久木園 大作
外秩父七峰縦走大会へ参加するため、3月頃からマンション10階を毎朝5回かけ登るトレーニングを始め、大会一週間位前から膝を痛めてしまった。その時から今回の完歩は無理と思うようになった。どうしようか?不参加か当日雨にでもなってくれないかと思いながら宿に着いた。当日の天気予報は土、日(4月18、19日)は晴れと伝えていた。
久木園 大作さん
昨年同宿だった川崎の山本さん、横浜の梅津さんの顔が一瞬頭をよぎった。家を出る時、体調が悪い時は早目に家に帰り、完歩の時は遅くなると伝えておいた。宿泊先で山本さんと会った。この一年の無事と御無沙汰を謝して、GOGOやRally 100k、山の縦走など・・とりとめのない談笑の時をすごした。そして足の痛みを話した。山本さんは無理をしないようにと、いたわってくれた。
私は今年は大霧山(766m)まで行ければ来年残りを完歩してもいい、その前の笠(837m)まででもいい、と考えていた。就寝前に湿布、サポーター、ストッキング等で入念に手当てをした。 3:30頃になると皆さんがゴソゴソしはじめる。私は第2回目の5:30に車で駅前に行った。山本さんと一緒である。
駅には6:00前後に上下の電車が入ってくる。そこから吐き出される人々で駅前広場は溢れんばかりの人だかりとなる。その頃合いを見計らって一斉に受付開始、スタートとなる。私と山本さんはBルート(竹沢駅前)を選んだ。足をかばってのことであった。
官ノ倉CPで7:05普段通りであったが、下りに気をつかった。安戸より見る山々は黄緑や黒緑の斑模様が山一面を飾っていた。山本さんとはいつかはぐれてしまった。一人になったがどこまでいけるか、不安であったが、今まで9回完歩しているから、痛みさえ出なければという気持と、痛みが出たらどうしようという気持が混在していた。
道筋が分かっているだけに、初めての人と比べて心強かった。萩平丁字路9:06。ここで大福もちを一つ口の中に入れて第一難関、笠山(837m)の直登が始まる。正に死闘である。今回は足をかばって林道の迂回路を歩き、林道と別れ笠山への直登の入口で千葉さんと会った。短い会話のあとお互いの健闘を誓って別れた。
今回に限ってあまり苦しさを感じない。その分ゆっくりと登っているのかも知れない。笠山CPに達した10:06、心配していた痛みを感じない。ゆっくり降りるよう慎重に足の踏み場を選ぶ。笠山峠から堂平山CP(857.8m) 10:47。少し早い昼食をとった。約20分休む。1km足らずの剣ヶ峰CP(876m)。時たま足に痛みが出るようだ。大霧山までは歩けそうだ。白石峠から定峰峠まで2.5km 約1時間。それから1.5km旧定峰峠へ1.5km大霧山。相変わらず厳しい登り降りが続く。大霧山CP(766m)で腰を下ろす。昨年ここで事故があったことを思い出す。
下から吹き上げてくる風が、流れ出る汗を拭き取ってくれた。大霧山の山神が今年も来てくれたんですか、頑張っていますね、と微笑んでいるようだ。
急激な下りに入る。粥新田峠に着いたら足の痛み具合によっては、リタイアを考えていたが、予想していた程ではなかったので、そのまま続けることにした。
秩父高原牧場で牛乳かアイスクリームを食べることにしていた。もう少し先だ。この牧場の売店では長く伸びた列を見た。諦めて牛乳売店へ。本日はすでに“売り切れ”の表示を見て諦めた。さて困った。そのまま皇鈴山CP(679m)登谷山(667m)と苦しかったが、何とかクリアできた。
時計の針は15:30を指していた。ゴールまで10km。下を考慮しても約2時間でゴールできそうだ。下り道、林道を急ぐことにした。足の痛みは感じない。
鉢形城跡ゴール、長い列を作っていた。係員が「完歩証がなくなりました。勘弁して下さい」という声だけが強く印象に残った。完歩できた。17:56。