随筆
川澄武雄 |
"わたしいまめまいしたわ” どこかの美術館が こんなタイトルで展覧会をやってるよ。 |
ヤナギ (長久保植物公園です) |
横断歩道を歩いていると、後ろでクラクションが鋭く鳴った。振り返って そして顔を戻して前に歩きだすと、横断歩道の太い白線が左から右へ 緩やかに回っている。めまい!・・交差点のまん中で立ちすくんだ。 かかりつけの耳鼻科に駆け込んだ。 「どぅったの?耳鳴りが前よりひどくなった?・・それとも花粉かい?」 「メマイだよ・・センセ メマイも診るんでしょ?」 センモン センモンよといいながら、顔のあちこちの部位を撫で回す。 そして小気味良く明快に言い放った。「カレイだな カレイ!」 |
マンサク どの花よりも先にマズサクの意 いま満開です |
歳をとる・・てぇのはきついね。代謝が鈍るし、調節が利かないのだ! 内科クリニックともすっかり顔なじみだね。いつもニコニコ迎えてくれる。 「少しはオナカ引込んだ?カレイでだめか・・頭の中はとんと伸びないで オナカばっかりでてくるんだものな・・はいメタボ処方!」 |
オウバイ (迎春花) 枝が地を這う 梅のような可愛い花 |
耳鼻科とメタボだけじゃないよ。歯科と膝痛。それに心臓だって投薬中 なんだから!こちらとすれば、トシだから仕方ないっか・・と思っても それをストレートに認めたくないものだから、心配顔して病院へ行って いるのにさ・・ 「カレイだから仕方ないね、おだいじに」 |
サンシュユ これからが見頃です |
しかしやはりボケや老化は確実に進行している。忘れ物、落し物など 毎日のこと。去年隠したヘソクリの場所も 未だに思い出せないんだ。 昨夜は真夜中 就寝時に、先に寝ていたワイフをゆり起こした。 「バルサンないかな?・・風邪かもしれん」 「・・バルサン?パブロンでしょ」寝入りばなの要求に不機嫌な返事だ。 たしかに・・バルサンは家を燻す薬品だったな。 いま私はカレイ本通りを勇往邁進していて、いささかの揺るぎもない。 |
ミツマタ 紙の原料ですね |
先週 近くの小学校の横を歩いていると全校集会をしていた。 「・・私たちは四月から中学生になります。楽しい思い出がいっぱいで 皆さんや学校のことをいつまでも忘れません。 6年○組 ○○○○」 ウン、たしかにオレにもあんな頃があったな・・。 もう一度中学生からやれと言われたら・・? ちょっとメンドウだな。 |
カリン 咳止め!カクテルで頂いた記憶がある |
人の一生を一日に見立てたとき、年齢を3で割ると時刻がわかる・・ そんな話を聞いたことがある。中学1年生を12歳とすると午前4時だ。 還暦の60歳は20時だから夜の8時。私なんか大晦日なら除夜の鐘が 聞こえてきそうだ。しかしこれでは72歳が上限だから、日本人の平均 寿命に合わないということで4で割るという。そうすると上限が96歳に 延び、60歳の還暦も午後の3時になって、まだまだ遊び盛りのガキだ。 いやァ メデタイ メデタイ! |
トサミズキ ヒュウガミズキも傍にある 好きな花です |
土産にもらった日本手拭いに、「長寿の心得」という面白い言葉があった。 「長寿の心得 − 人生は山坂多い旅の道」 還暦・・60歳でお迎えの来た時は、只今、留守といえ 古稀・・70歳でお迎えの来た時は、まだまだ早いといえ 喜寿・・77歳でお迎えの来た時は、せくな老楽、これからといえ 傘寿・・80歳でお迎えの来た時は、なんのまだまだ役に立つといえ 米寿・・88歳でお迎えの来た時は、もう少しお米を食べてからといえ 卒寿・・90歳でお迎えの来た時は、そう急がずともよいといえ 白寿・・99歳で 〃 〃 頃を見てこちらからボツボツ行くといえ 気は長く 心は軽く 腹立てず 口をつつしめば 命ながらえる |
コブシ モクレンじゃないよね |
啓蟄もすぎたから、蟻やトカゲ、蛙などが冬眠から覚めて活動を始める。 この芽吹きどき・・長久保植物公園は日々刻々春の彩りが変わる。 冬木立のなかで、柳やカリンの堅い新芽が太陽の光を反射していた。 鶯の笹鳴きが聞こえぬかと散歩している。花風が吹くのもまもなくだ。 |
ユズリハ 新芽が出るときに古い葉を落とすのでユズリハという さして役にも立たないがもう少し待ってくれるかい |