紀行文

モンゴルを歩く

(4)

2006年8月5日〜8月19日の記録
池 内 淑 皓
食事について説明しよう
 遊牧民の食事は、つつましい。
朝は忙しいので、各自が勝手にテーブルに出っぱなしのウルム、アロール、スーティーツアイ位で済ます。お母さんと子供達は乳搾りに出かける。
 昼になるとお母さんが「肉うどん」(ゴリルタイ・シュル)を作る。これはいつでも作る食事のメニューの一つ。小麦はモンゴル東部のドルノド県(メネン高原)で収穫出来る。ここは又ノモンハン事件(旧日本軍)で良く知られている。 
練った小麦粉をストーブの上に被せて軽く焼く 干し肉を切って出汁を作る 塩で味をつけて食べる
  
@ まず小麦粉を水で捏ねて、まな板の上で径50cm程の円形に伸し、ストーブの上に被せて軽く焼き、束ねてからうどんのように包丁で切る。
A 乾燥させておいた牛肉、羊肉を鋏で細かく切り刻む。馬鈴薯、玉葱、人参等を鍋に入れ、岩塩と水を加えて煮る。
B 煮立った鍋にうどんを入れて食べる。総て塩で味を付ける。モンゴルでは岩塩は特産品なのだ。

 そしていつでも作る「ボーズ」がある。中国では包子(パオズ)といわれている。これはお客さんが来たときは必ず作って食べさせてくれる。
まず小麦粉で餃子の皮を作る。牛肉、羊肉を鋏で細かく切り刻み、ニラ、玉葱を加えて捏ねる。皮に包んで蒸す。
醤油がないので塩味で食べる。私は日本から持ってきたラー油と醤油で食べたら、牧民達に大いに喜ばれた。
牧民がチャンスンハマを切り取っている
 
またご馳走の一つである「羊の塩茹で」(チャンスンハマ)がある。羊肉を大きなブロックに切って、大鍋に入れて塩茹でにする。ただそれだけだ。大皿に取って各自ナイフで切り取りながら食べる。チャンスンは茹でる、ハマは肉。これは牧民達が集まった会合、お祝いの時に皆で食べる。
牧民達はいつも口にできないご馳走なのだ。
もう一つ代表的な料理「ホルホグ」を紹介しよう。
この料理はチャンスンハマより大がかりで、おもに大きなお祭り、結婚式、多くの賓客が訪ねて来た時のような、めでたいときにつくられている。

 @細かく切った羊肉準備する

 A焚き火をして手頃な石を焼く。

 B20L程の圧力鍋の中に水と馬鈴薯、人参、玉葱を切っ
  て入れ、岩塩で塩味にする。
                 
 


 C切った羊肉を鍋の中に入れる。

 D鍋に焼けた石を入れ、圧力鍋を密封し残り火にかけて蒸す。  

 E30分程すればホルホグの出来上がり。

この料理はものすごく旨い。味の浸みたやわらかい玉葱、人参が絶品である。




(残り火で加熱しているところ)
                     
                    
 羊の解体について


 牧民達は当たり前であるが、実に見事に羊を屠る。草原には一滴の血も流さない。草原は自分達の命のかかる神聖な大地だからだと云う。






 
解体の手順を示そう。

*牧民が前足と後足を持ち、羊を草原に寝かせる。

*一人の牧民が心臓の辺りを5cm程ナイフで切る。

*手を入れて、親指と人差し指と中指を使って心臓近くの大動脈
 を引きちぎる。羊は暴れることなくすぐ絶命する。
 
*腹部を縦に切り裂き、内蔵を容器に取り出す。

*腹腔に溜まった血をお椀で汲み出す。

*表皮をナイフで剥ぎ、肉を切り出す。

 50kgの羊から20kg程の肉片が取れる。
 約30分あれば総てが終える。血は腸詰めにする。内臓は総て食べる。皮は商品。


                  
                (つづく)