紀行文
池 内 淑 皓
私達の泊まるシェルウイカンバホテルは、ナムチェの入口から更に300m程登ったシャンボジェの裾に位置している。標高は富士山と同じ高さにある。ホテルから歩いて5分程のチョルクンと言う丘にはネパール軍の駐屯地があるが、ナムチェではここから唯一エベレストが見える。朝晩エベレストを見たければこのホテルに滞在することを勧めたい。昼間は雲に隠れやすく、朝晩がチャンスだ。
このホテルはナムチェでは一番大な施設を誇り、ゴーギョピーク、カラパタール(エベレストがよく見える所で5、545m地点、トレッカーはここまでなら行ける)、クーンブ周辺の山々を目指す登山者の一大拠点となっており、野営のための屋外トイレ、炊事場、天幕場、ヤクの放牧場等の施設が整っている。
シェルウィカンバホテル チョルクンの丘から見た朝のエベレスト(中央奧)、右はローツエ 奥地を目差す登山者(ホテル内キャンプ場にて) 私達は、ナムチェの麓でポーターのパールパッライ君を帰してしまったことを後悔した。麓からホテルまでの登りが地獄の様な苦しさとなってしまった。疲れている上に、荷物を背負って富士山の頂上まで直登する感じだからだ。
ビスタリー、ビスタリー(ネパール語でゆっくり、ゆっくりの意味)で14時30分ホテルにたどり着いた。
共同の太陽熱利用の温水シャワーと水洗トイレ付きのツインルームが有り難い。ヒマラヤの山奥でこの様な設備は驚きであるが、既に記述したようにナムチェバザールはエベレスト方面の登山者が必ず滞在するから、おのずと外国人が快適に利用出来るよう施設が整っている。ここでは国際電話もかけられれば、インターネットの利用もOKなのだ。水力発電もあり、きれいな水も供給されている。この村には電信柱が無く、電線は地下に埋設されている。雪害対策だと言っていた。またここでの宿泊は共通してUS$15に統一されていると云う(地球の歩き方、「ネパール」2010版ダイヤモンド社)$15は高いが、この地域でこれだけの設備を維持して行くには止むを得ないと思う。ベストシーズンには多くのトレッカーが訪れるが、雨期や真冬は訪れる人が少なくなるからだ。
私が滞在したホテルは二食付き一人Rs1,500であった。現在はドル建てでなく、ルピアでOKとなっている。
10月31日(日) 朝目が覚めたら、神さんの体調が悪い。頭痛がする、吐き気がする、食欲がない、だるい。
これらは典型的な高山病の症状だ。このままここに居るのはまずいので、すぐナムチェの部落まで下る事にする。300m下がって様子を見る。半日程居て症状が改善されなかったら、更に高度を下げてトップダラまで下るしかない。
昼頃には症状が少し改善されたと云うことで、ナムチェの村を散策しながらお土産屋を覗く。夕方まで部落の中を散歩しながら、ホテルへ戻った。雨雲が深く垂れ込めて来て気温が急激に下がってきた。
ストーブにかじり付いて暖を採る、燃料は乾燥したヤクの糞だ。ヤクの糞を集めて、お好み焼きのように広げ、乾燥させて売りに来る。ホテルではこれを購入して燃料とする。炊事の燃料はプロパンガス、はるかルクラからヤクの背に載せられてここまで持って来る。またケロシンを使用する所もある。キャラバン隊はケロシンバーナーを使用して煮炊きをしていた。
ナムチェバザールの繁華街(道の両側にお土産屋、登山用品店が並ぶ ナムチェの繁華街、この道はエベレスト街道なのです。ヤクも通ります。 続く