ビバ! 御所見

廣瀬 敏明

御所見。“ごしょみ”である。
 藤沢市の北西部に位置する地名であるが、地図で探しても見つからない。用田(ようだ)、葛原(くずはら)、菖蒲沢(しょうぶさわ)、打戻(うちもどり)、獺郷(おそごう)、宮原(みやばら)の6つの地区が合わさって御所見を構成する。地域は鉄道から離れたところにあり、最も近い駅でも5km程ある。公共交通機関はバスだけなので、ウォークに適した土地とは言い難く、歩く機会が極めて少ないところである。
 この地のほぼ中心にある公民館まで歩いて来られる年配者も多い。気のせいか街を歩くお年寄りは足が達者である。この公民館に会報を置かせていただいているので、毎月届けに来て顔見知りになったお婆さんがいる。30分以上かけてここを度々訪ねるという健脚である。話をしているうちに気付いたのだが、御所見の人は交通機関のないところは10kmぐらい平気で歩くのに、5kmしか無い駅まで歩くのはたいへん恥ずかしいことだと感じているらしい。
 御所見の中心と考えられる用田は、かって中原街道と大山街道が交差して、たいへん賑わったところである。用田の辻は交通の要衝として名高かったが、近くに立派な道路が開通して忘れられかけている。
 これらの街道から一歩外れたところは、歴史的価値の高いところが散在し、民話、伝説も多いところで魅力に溢れ、奥が深く、毎月この地を訪れる機会が与えられていることにたいへん満足を感じている。