紀行



その6 極楽寺・鎌倉小町間

八柳修之

極楽寺を出た電車は極楽寺トンネルを潜り、このあと、権五郎社前停留所のあと、長谷、由井ヶ濱、海岸通、原の台、学校裏、大町、蔵屋敷、終点の小町となっていた。極楽寺から終点小町まで3km余りの間9ヶ所もの停留所があり、当時は沿線住民の足になっていたことが分かる。由井ヶ濱停留所は現在の由比ヶ浜駅とは同じ場所ではなかったこと、終点が現在のJR鎌倉駅に乗り入れていたわけではなかったなど興味深い。この区間、電車は住宅地の中を通り線路沿いの道がないので、由比ヶ浜のバス通り(311号線)との間を往復しなければならなかった。




権五郎社前停留所 

210mの極楽寺のトンネルを抜けると、御霊神社に出る。地元では祭神の一人に鎌倉権五郎景政を祀っていることから権五郎神社とも呼んでいる。毎年9月18日に行われる面掛行列が有名である。
境内は江ノ電の線路に面しているので、踏切の信号音が時折静寂を破る。踏切を渡った右手に、僅かなスペースが停留所の跡ではないかと思われる。
                   


長谷駅

長谷駅は1907年(明治40)8月開業、長谷寺、大仏で有名な高徳院への最寄駅とあって、一日平均4,000人弱の乗客、二本のホームがあり、駅員が常駐している。
現在の駅舎は1985年(昭和60)に建て替えられている。


由井ヶ濱停留所

長谷駅から線路沿いの道がないので、由比ヶ浜海岸通り(311号線)、矢沢商店の角を海側に進むと長谷4号踏切があり、この辺りにあったと推定される。
ここから由比ヶ浜の海岸まで150m余り、確かに海岸まで近い。前述の金子氏の著によると、この辺りに明治26年開校の由井浜小学校があって明治38年まで続いたとある。


海岸通停留所(現由比ヶ浜駅)

由比ヶ浜海岸通り、文学館入口信号を海側へ。
駅は由比ヶ浜三丁目10−13、開設は1907年(明治40)8月、無人駅であるが夏場は臨時駅員が出る。海岸までの距離は、廃止された由井ヶ濱停留所よりも遠い。


原の台停留所

由比ヶ浜海岸通り、寸松堂から海側、60m位入った所、高浜虚子の住居跡の一角(由比ヶ浜5号踏切側)に「波の音 由比ヶ浜より 初電車」という句碑がある。この辺りに原の台停留所があったと思われる。ここから現和田塚駅まで100mそこらである。


和田塚駅

原の台停留所と学校裏停留所との間に和田塚駅が出来たのは、1907年(明治40)8月、近く和田義盛の墓と伝えらえる和田塚があるが、一日の乗車数は200人に満たない。和田塚は建保元年、鎌倉幕府内部抗争による北条義時と和田義盛による合戦の結果、和田一族が敗死の屍を埋葬した塚として伝えられる。


学校裏停留所

学校裏とは鎌倉市立第一小学校の裏であろう。
同校は1893年(明治38)、現位置に鎌倉小学校として開校されている。古い写真によると若宮大路側に正門があるので、学校裏は和田塚2号踏切の辺りであろうか。


大町停留所

由比ヶ浜大通り、和田塚4号踏切際にハリス記念幼稚園があるが、線路際に大町停留所跡の表示板が建っている。1907年8月(明治40)から1944年(昭和19)までプラットホームもある駅であったこと。また学校裏停留所とこの大町停留所の間に琵琶小路停留所があったと記されている。
 
琵琶小路停留所

その琵琶小路停留所は由比ヶ浜大通り六地蔵の角、古い建物THE BANKを右折、第一小学校前を通り若宮大路に出る道を俗に琵琶小路と呼んでいるから、和田塚3号踏切辺りに琵琶小路停留所があったと推定される。近くにメゾン琵琶小路という名のマンションがある。

1902年(明治35)9月1日、藤沢〜片瀬間開業以来、小刻みに路線を延長し1907年(明治40)8月16日、藤沢から大町まで開通、ついに鎌倉に到達した。しかし、このあと大町〜小町間500mを開通するのに3年2ヵ月も要した。最大の要因は横須賀線を横断することであった。
  


蔵屋敷停留所

大正10年12月の地図を見ると江ノ電は大町停留所から直進して横須賀線高架下を潜り若宮大路へ出ていた。現在の御成は以前鎌倉町蔵屋敷と言う地名であった。蔵屋敷停留所は、高架を潜る手前にあったと思われるが定かではない。現在の人道下を通る電車の古い写真がある。
戦後、蔵屋敷停留所の辺りに闇市があったというが、大正10年12月の地図を見ると鎌倉食品市場があった。


小町停留所

横須賀線の高架橋をくぐり、若宮大路上を一直線に大巧寺、現在中央公民館(旧町役場)の前が終点の小町停留所であった。藤沢〜片瀬間工事着工から8年9ヵ月の歳月を費やし、1910年(明治43)11月4日、藤沢起点10.3kmに及ぶ全線が開業した。1949年(昭和24)国鉄鎌倉駅構内に移転した。



                 (完)
参考資料:神奈川の歴史散歩(山川出版)、かまくら今昔抄60話 清田昌弘、江ノ電HP、鎌倉・三浦半島・おもしろ地名考 三浦一男