随筆

一富士 二鷹 三茄子

田村 心一
田村心一さん
新年明けましておめでとうございます。
今年も皆様とともに元気よく歩きたいと思います。よろしくお願いします。

 「不二・不尽・不死・福慈・富知」、これらは富士山を書き表す言葉で読み方は全て「ふじ」である。「ふじ」という発音は漢字が大陸から伝わる以前からあり、それに様々の漢字が当てられたらしい。但し、「ふじ」にどんな意味があるのかは、アイヌ語説やマレー語ら南方語説など諸説様々で、実はまだ解明されていない。意味も良くわからず、また文字にも拘りを見せずとは古人は実に大らかなものだ。
 さて表題である。皆さんも一度は口にされ良くご存知の筈。夢に見るとめでたいとされ、初夢で見ることが出来れば更に縁起良しとされることわざだ。これも諸説あるが、どれも徳川家康に(つまり駿河に)関するものが圧倒的に多いのである。
 一例として、駿河最高峰の富士山、家康の好んだ鷹狩(軍事演習なのだ)の鷹、そして家康好物の茄子(早期に栽培された初物は非常に高価)の三つ等々。そして更に四扇(しせん)、五多波古(ごたばこ)、六座頭(ろくざとう)と続くのである(知らなかったなあ)。これらは正月の舞で使用する扇、正月から吸うことが贅沢な煙草、そして正月に座敷に呼ぶ弾き語りの法師を意味しているのだという。
 夢でも良いから贅沢と権力を・・という庶民願望がこのことわざを誕生させたのであろうが、果たして現代ではどのようなことわざになるのだろうか?