寅さん歩 その10

健康ご利益めぐり-1 台東区(1)


平野 武宏
全国のウオーキング大会を歩きまわり、映画「男はつらいよ」の寅さんのようだと妻の友人が「平野寅次郎」と命名、ペンネームとしました。
2012年東京に住まいを移してからは、故 地井武男の「ちい散歩」や現在TV放映中の加山雄三の「若大将 ゆうゆう散歩」に次ぐ、「寅さん歩」と命名して都内を歩き回っています。TV放映はありませんよ。

年の初めには「初詣」や「七福神めぐり」と称して、寺社を訪ね「開運招福」や「健康長寿」などをお願いします。
日本古来の神社は八百万(やおよろず)の神と言い、お寺を含めるとさらに多くの神様・仏様がそれぞれの役割を持ってご利益を授けてくださっています。特に「いつまでも健康で過ごしたい」とはいつの世でも最大のお願いごとです。江戸時代では病気になったら、医師も医療機関も薬も少なく、将軍様も大名も庶民も皆、神様・仏様におすがりしていたようです。

祖父も父も越えられなかった古希の壁を越えた寅次郎、体力の衰えも感じるこの頃なので「健康のご利益」に興味を持ちました。
諸病平癒のような万能の神様・仏様もいますが、具体的な病気に対するご利益を持つ神様・仏様が多くいました。当時の人々がどんな病に悩み・苦しんでいたかも知ることが出来ます。
調べてみると東京23区内の具体的な病のご利益がある寺社約140社の内、ご利益の上位は眼、咳・喘息、皮膚病、足・腰、歯で約半分を占めていました。また、東京23区のすべてに健康ご利益がある寺社がありました。

寅次郎、自分の足で東京23区の「健康ご利益」を確かめようと、先ずは23区内で一番多い健康ご利益を持つ台東区からスタートします。
「寅さん歩」ご愛読の皆様の健康祈願もしながら歩きます。

まだ、東京在住1年半ですので、漏れている寺社があったらご容赦を。
最寄駅は代表例です。

[台東区]

谷中・上野・浅草に多くありました。ご利益の神様・仏様は寺社の境内にあるお地蔵さまや摂社、末社の場合が多く、境内を探しました。

[足・腰]延寿寺 日荷堂(にちかどう) 谷中1-7 
                       最寄駅 千代田線 根津駅

谷中のシンボル ヒマラヤ杉の前にある日蓮宗の寺院。山門を入りすぐ右手にある日荷堂は宝暦5年(1755年)久遠寺より日荷上人像を勧請、以来、江戸の人々の足腰の病の平癒の祈願所として親しまれてきました。
お堂に祀られている日荷上人は日蓮の高弟 日祐(にちゆう)の弟子となり妙法と号し、夢枕に立った仁王様のお告げで二躰の仁王像を背負い、横浜の地から身延山久遠寺に運び上げ、山門に安置したと伝えられる大変足腰の丈夫な方でそれにあやかって足や腰の病を癒し、健脚祈願、道中安全、交通安全、厄払いのご利益もあるありがたい方になったそうです。

[足・腰]西光寺 韋駄天像(いだてんぞう)  谷中6-2-20 
                        最寄駅 千代田線 千駄木駅

入口には新義 真言宗の寺院と記載。入って右側に韋駄天像があり。「四天王南方増長天の八将の一つで湿婆(シバ)神の子と伝えられ、走力に優れ、速やかに邪神を削除するので仏法(特に伽藍)の守り神とされる。釈尊涅槃の際に、足の速い邪鬼が仏牙を盗んだのを追いかけて取り返した俗説があり「韋駄天走り」の語源ともなっている。
古来より足・腰病の平癒に効験ありと信仰されている。韋駄天像は太閤秀吉の朝鮮入国に同行せし藤堂高虎侯が朝鮮より請来、安置」と説明板に記載。
寅次郎、二つの寺院ではいつまでも元気に歩けるようにと「健脚祈願」を念入りに行いました。
[皮膚病]大円寺 薬王院 瘡守稲荷 谷中3-1-2 
                   最寄駅 千代田線 千駄木駅

団子坂通り三崎坂(さんさきさか)谷中小学校前にある日蓮宗の寺院。
古くより「瘡守稲荷」は「」の字面から、腫物やニキビなどを含めた皮膚に関する病気に効験があるといわれています。天然痘は明治時代まではもっとも恐れられた伝染病。その天然痘から守ってくれるのが「疱瘡神」と言われました。

                    
大円寺の瘡守稲荷はひとつの建物に2か所ある扉のうち向かって右側の「薬王殿」に祀られているが、それは明治初期の神仏分離令が出されたときに本地仏「薬師如来」としたためだそうです。
また、この寺は笠森稲荷を合祀しており、江戸三大美人の「笠森おせん」を錦絵に描いた錦絵の開祖 鈴木春信の碑があることで有名です。
「おせん」は笠森稲荷前の茶屋「鍵屋」の看板娘で、絵師 鈴木春信はその姿を当時全く新しい絵画様式である多色刷り版画「錦絵」に描きました。

[皮膚病]功徳林寺 笠森稲荷 谷中7-6 
                最寄駅 日暮里駅

谷中霊園の近くにある浄土宗の寺院。こちらも「笠森稲荷」ひっそりとしていて、説明板もありませんでした。
江戸の昔は両者で本家争いなんてこともあったらしい。

   
[虫歯]妙雲寺 谷中6-2 最寄駅 日暮里駅

谷中霊園の近くにある日蓮宗の寺院。昔から虫歯封じの寺として知られ、入口にあるお題目のひげ文字「むしば祈念寺」の字を刻んだ碑があり。
奥には近代的な建物の寺院があり、ご本尊は2階に安置とのこと。


[歯痛・口内炎]小野照崎神社 下谷2-13-14 
                 最寄駅 日比谷線 入谷駅

小野篁(おののたかむら)と菅原道真を祀る神社。
下町の八福神めぐりでは「学問・芸術」の神様。映画の寅さん 渥美清氏も駆け出しで仕事がない時に、この地にお参りに来たとのこと。
神仏混淆の時代に薬師如来を祀った関係で江戸時代に虫歯に苦しんだ農夫が炒り豆を供えて祈願、平癒した噂が広まり虫歯・ 口内炎などの「口の病」に霊感あらたかと信仰を集めたとのこと。

社殿の隣には国指定の重要民俗有形文化財の富士塚「下谷富士」があります。(寅さん歩 その4-3大江戸福めぐり、その9-3富士塚めぐり参照)

[喘息] 龍谷寺 たんぼとけ 谷中4-2 
                 最寄駅 千代田線 千駄木駅

団子坂通りにある日蓮宗の寺院。門を入るとすぐ右に「たんぼとけ」がありました。墓碑があり相州石橋山の合戦で討死と記載。源頼朝が伊豆挙兵時の武士で佐奈田余一義忠。喘息に苦しんだらしい。
死後、同病の人を救っています。写真下左は寺院、右側にあるのが「たんぼとけ」で写真下右は拡大です。


[たん・せき・喘息、はしか]浄名院 へちま地蔵 
                  上野桜木2-6-4 最寄駅 上野駅

浄名院は寛文6年(1667年)寛永寺36坊の一つとして創建。明治9年(1877年)民衆を救うため八万四千体の地蔵尊建立が発願され、八万四千人に地蔵尊の真影を授与、必ず1体ずつ建立するように誓願しました。
これに対して北白川宮、徳川、近衛、毛利などの華族、陸奥宗光、大山元帥、三井、安田の財閥、梨園の花形その他の方面の方が造像し、境内一面に地蔵がありまます。その中に緑色のへちまを持った背の高いお地蔵さまがいました。へちま水咳止の効果ありとのこと。
たん・せき・ぜんそくに苦しむ人の為に旧暦8月15日に法要を営み、完治する秘法を持って苦しむ人を救うそうです。はしかにもご利益があるそうです。平成26年の法要は9月8日と掲示。

近くに江戸六地蔵6番目の代仏がありました。(寅さん歩その6参照)

[病気平癒]浄名院 あらい地蔵 上野桜木2-6-4 
                  最寄駅 上野駅

同じ浄名院の山門を入り左にあるあらい地蔵は自分の患部と同じ所に水をかけ、タワシで洗い祈願すると病気平癒のご利益ありとのこと。


[寄り道]愛玉子(オーギョーチイ) 上野桜木2-11

桜木交差点角(谷中方面)にある台湾スイーツのお店。台湾の新高山(現玉山)山麓に密生する植物で木ノ実状の種子を寒天状に加工(黄色いゼリー状のもの)甘味のあるシロップをかけたものです。
カロリーは米食と同じくらいあり、腎臓の妙薬と言われているとのこと。
つるりとしたのど越しは文豪 池波正太郎も愛したとか。
個人の好みがあるかもしれませんが、一度、ご試食あれ。お土産用にお持ち帰りも出来ます。いずれも400円。

 次回も台東区の健康ご利益めぐりを続けます。

   平野 寅次郎 拝