藤沢にナウマンゾウがいた

八柳修之
 藤沢にナウマンゾウがいた。しかもウォーキングでよく訪れることがある村岡の天嶽院で化石が発見されていたということです。この事を知ったのは、「藤沢市文化財ハイキングコース」(平成12年3月、改訂2版)藤沢市教育委員会発行)、
天嶽院の説明の中に「天嶽院東側の崖では、約18万年前の象の化石が発見されました。大きな象が横わたっているように肋骨、大腿骨などの化石が次々と現れ、さらにナウマンゾウの可能性もあるということです」との記述があったからであった。
閑人はその地点がどこであるか、知りたくなり早速出かけた。寺務所に訊ねたが、ナウマンゾウの化石が発見されたことはむろん、その場所は住職でないと分からないという。初回は空振りであった。
2回目も住職が不在であったが、場所を知っている者がいるから案内してくれるという。私と同じ年頃の老人であった。「その場所は天嶽院とオリンピックの間の道路の天嶽院側、今、住宅地になっている所の裏側で、宅地造成の際発見されたのです。住宅地の裏、他人の地所だから、入ることができないし、標柱のようなものも建っていない」と言って、途中まで案内してくれた。なるほど、住宅がびっしり建っていて、崖側には入れず発掘地点は確認できなかった。


発掘地点はオリンピック横からの坂道 
右側住宅地の裏側にある。
天嶽院避難所奥から住宅地の裏側へ入れるようだが私有地で立ち入ることはできない。 

調べて見ると、天嶽院でナウマンゾウが発見されたきっかけは、1975年(昭和50)、藤沢市内を地質調査していた大学生が見つけた肩や腰、後肢の骨がゾウの骨と判明した。1980年、同じ地点で造成工事が始まり、脊椎骨、肋骨、肩甲骨など発掘された。残念ながら頭骨や歯は発見できなかったが、1975年発掘のものとで1体のメスのゾウと分かった。天嶽院下では、ナウマンゾウ以外にサル類、シカ類、鳥類、カメ類、淡水生貝類の化石が産出、現在のそれとそれほど大きな違いがないという。また、藤沢では1976年に伊勢山辺(現在の白旗)で左下顎の大臼歯が工事現場から出た残土の中から発見されている。

ナウマンゾウが日本に生息していたのは、35万年前から1.5万年前である。
地球は過去に温暖期と寒冷期を何度も時期を繰り返していた。12.5万年前をピークに暖かい時期になり、各地で海面が上昇し海岸線が内陸側に移動した。
この海進を下末吉海進と呼んでおり、藤沢は海の中にあった。この結果などから天嶽院のナウマンゾウが生息した時代は、約13万年前と考えられるに至ったという。

後日、藤沢市歴史課を訪ね、発掘地点を教えてもらい作成したのが上図である。前述の著述の発見場所は天嶽院東側崖ではなく北側崖、約18万年前を13万年前が正解であった。 

参考資料:特別展 ナウマンゾウがいた!~温暖期の神奈川~紹介、樽 創著、自然科学のとびら 第13巻2号 2007年6月15日発行
図説 ふじさわの歴史 藤沢市文書館 1991年発行