藤沢にある朱印地

八柳修之
朱印地とは江戸時代、徳川将軍によって年貢・課役の徴税を認められた寺社領のことで、軽度な裁判権も与えられていた。この朱印地が藤沢に6寺ある事が分かった。
石高順に寅さん流に訪ねてみることにしよう。

1位 100石 藤沢山無量光寺清浄光寺(遊行寺)時宗 朱印地下賜:天正19年
(1591)
          西富1-8-1 旧東海道遊行寺坂西側

 
本尊阿弥陀仏如来 開山呑海(どんかい)、開基俣野五郎景平、創立は1325年(正中12)、清浄光寺は遊行上人によって統率される時宗の総本山である。開山の呑海は時宗の創始者一遍の孫弟子にあたり開基俣野五郎景平の実弟とされる。遊行ののち俣野の所領に清浄光寺を建立した。

遊行寺は時の政権との結びつき、1435年(永享7)関東管領足利持氏が藤沢道場に仏殿120坪を造営寄進している。1590年(天正18)7月、小田原城は豊臣秀吉によって落城、藤沢の地は徳川家康の支配下に置かれ、家康は遊行寺に寺領100石の朱印を与えた。また徳川は1613年(慶長18)遊行上人に遊行回国に当たり馬50疋の徴発権(伝馬朱印状)を与えた。この徴発権は大名並の扱いで、1848年(嘉永元)まで続いたが、やがて遊行上人回国による諸国の接待の負担への批判、遊行の本質も失われ、235年間に亘った伝馬朱印状は1848年(嘉永元)に廃止され、これとともに次第に時宗は衰退していった。

上の写真右は中雀門。開山忌など特別な日にしか開かない。門には天皇家(菊の御紋)と徳川家(葵の紋)が見られる。中雀門を入ると、5代将軍徳川綱吉の「生類憐みの令」により、綱吉が江戸中の金魚が集められた放生池がある。花菖蒲の季節、菖蒲園が公開される。

2位 30石 功徳山天嶽院 曹洞宗 朱印地下賜:天正19年(1591)
      渡内367 高谷小学校北隣り


本尊先手観音、開山虚堂玄白、開基北条長氏、創立は文明年間(1469~87)頃、当院は室町時代僧虚堂の建てた草庵を鎌倉玉縄城北条綱成が北条早雲の菩提を弔うため寺院としたものである。天嶽院の案内書によると、天正4年、伽藍が焼失したが、紀伊大納言徳川光貞郷は伽藍を建立、再中興開基とされている。その後、天正19年(1591)朱印地30石を賜っている。
茅葺の山門は珍しい。参道の両脇の苔、紅葉は見もの。梵鐘は寛文3年(1633)の銘をもつ古いものである。

3位 21石 玉雄山寶泉寺 曹洞宗 朱印地下賜:天正19年(1591)    
     
遠藤6094 バス停苅米より南東へ380m


本尊釈迦如来、開山如幻宗悟、開基小田原北条氏臣の仙波土佐守、創立は永生年間(1504~21)頃、天正19年(1591)朱印地30石を賜る。
 
寺に寛永3年(1626)制作の青銅の雲板(うんばん:食事、座禅などの時刻を知らせる板状の仏具)は市指定文化財。所蔵の「涅槃図」(幅9尺、丈12尺)は400年以上のもので、毎年2月本堂に飾られる。宝泉大仏は高さ10m。

 
4位 9石 光輝山雲昌寺 曹洞宗 朱印地下賜:慶安元年(1648)
     亀井野1457 バス停雲昌寺近く

                     

本尊如意輪観音、開基道済(北条義時)、創立は建保年間(1213~19)頃、もと今田にあり瑞龍寺と号した。慶長元年(1596)水害により堂宇が流出し、宗順により現地に移転され、寺号を雲昌寺と改めた。慶安元年(1648)朱印地9石を賜る。

山門、本堂の屋根の棟の部分に葵の紋がある。本堂内に秀吉が小田原攻めのとき出した禁制(きんぜい、禁止事項を公示する文書)がある。日大農場へ通じる出口脇に藤棚がある。

5位 7石 龍口山本蓮寺 日蓮宗 朱印地下賜:慶安2年(1649)
     片瀬3-4-41 片瀬市民センター東側


本尊三宝諸尊、開山義玄、創立は推古3年(595)、当初は密教寺院であった。天歴(1184~85)の頃、源頼朝により再建された。嘉元(1303~06)の頃、日秀により日蓮宗に改宗する。慶安2年(1649)に朱印地7石を賜る。龍口寺輪番8か寺の一つ。

6位 3石7斗 三島山瑞光院観応院 真言宗 朱印地下賜:慶安2年(1649)
       大鋸2-6-8  藤沢橋交差点国道遊行寺手前


本尊不動明王、開山道教、開基源実朝、創立は建保元年(1218)、応永5年(1398)幸海より中興、慶長14年(1609)幕府より、壇林所(仏教学研修所)に指定される、慶安2年(1649)朱印地3石7斗を賜る。末寺14か寺を数える大寺院であった。
本堂の右側には珍しい廻る御堂がある。

参考資料:「藤沢と遊行寺」藤沢市史ブックレット2 高野修著 発行:藤沢市文書館
     「藤沢 わがまちのあゆみ」 児玉幸多編 発行:藤沢文書館
     「藤沢史跡めぐり」 藤沢文庫刊行会編  名著出版