小田原市前川の江藤美知子さん(59)は車いすで、愛犬のりん太郎君と6キロコースに挑んだ=写真。子どもの頃、ポリオにかかり、下半身が不自由に。「こんな長い距離は初めてで不安。でもゆっくり街を楽しみます」
小田原漁港では、食堂前で無料の焼きたて干物をつまんだ。波止場では、魚釣りする親子のバケツをのぞきこんで「このウナギみたいな魚はなんですか。カニも釣れるんですか」と好奇心旺盛に話しかけていた。
困ったのはトイレ。バリアフリーではない小田原文学館では、2階にあるため断られた。漁港の車いすトイレは扉が開かない。休憩地点の山根児童公園にある障害者用簡易トイレは「ドアが手前に開く構造なので、車いすに乗ったまま出入りするのが大変」だった。「もっと車いすの人のためのトイレがあっていいんじゃないですか」
江藤さんにそっと付き添ったのが、藤沢市みその台の高田栄さん(70)。湘南ふじさわウオーキング協会の副会長だ。出発時に江藤さんを見かけ、後ろについた。波止場の築堤の下り坂や海の際では万が一の暴走に備えて近くで身構えた。港から出る上り坂では車いすを押した。「コースは平らですが、障害のある人にもっとやさしさが必要だと感じました」と高田さん。3年続けて視覚障害者の介添えをしたが、車いすとの同行は初めての体験だ。
スタートから3時間40分でゴール。りん太郎君も、疲れて車いすに乗り込むのではと思われたが、最後まで歩き通した。「大成功の冒険旅行でした。楽しかった」と江藤さんは声を弾ませた。(asahi.comより1部とりだし掲載)
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