寄り道・道草76 | |||||||||
店と店との間にある路地とはハルミ食堂と岩本楼の間にある。この路地を通る人は釣り人、それに「江ノ島西浦写真館」が実在するものと訪ねて来る三上延ファンだけだろう。 三上延は1971年生の藤沢の人、「ビブリア古書堂の事件手帖」でブレイクした。「江の島西浦写真館」は、祖母の写真館の遺品整理を依頼された主人公の繭(善行在住)が未渡しの写真に隠された過去の謎を解いていくストリー。若者向きの内容である。 西浦は小さな漁港となっているが、漁船は片瀬漁港が完成してから移ったようだ。小さな堤防で釣り人が投げ釣り、船揚場に5〜6隻のカヌー、小さな砂浜には若いカップル2組が海を眺めているだけだった。小説にあるように、夕暮れ時富士山を眺めるのは絶好なスポットであることは今も変りはない。 西浦はかって、江戸時代、藤沢の年貢米など境川の片瀬湊(荒屋敷橋付近)から西浦へ廻船で運ばれ、西浦で親船(千石船)へ積み替えられ江戸などへ輸送されていた。また江戸からの荷は西浦で陸揚げされるか、艀や小舟を使って上流の片瀬湊まで運ばれていた。多くは浦廻船という100〜300石積の河川も航行できる五大力舟と呼ばれるものであった。 江ノ島には東浦という港もあったが、東京オリンピックの際、埋め立てられてしまった。 そして江ノ島にはかっては観光客相手のスタジオを持たない写真屋が沢山あったようだが、今は江ノ島頂上付近に片野写真館が一軒残るだけである。(2017・8・18 八柳修之) 参考引用:江ノ島西浦写真館 三上延著 光文社 藤沢市史 第6巻 藤沢市 |