県外会員便り

〒418−0011

田村 心一
(山梨県富士河口湖町在住)

 地球上には数多くの国家がある。その主権の及ぶ所には住所が存在する。我が国の領土にも津々浦々住所が定められており、それが当たり前と思い、日々の生活が成り立っている。例えば、東京から南へ約1700kmの小笠原諸島、その南端に位置する沖ノ鳥島の住所は「東京都小笠原村沖ノ鳥島1番地(北小島)、2番地(東小島)」となっている。しかも〒100-2100と郵便番号までキチンとあるのだ。

 ところが、富士山頂には郵便番号は存在するものゝ、住所は現在に至るまで無いのである。理由は富士山が、山梨・静岡の両県にまたがっているため。地図上の境界区分では、東が「静岡県小山町須走」。南が「静岡県御殿場市中畑」、南西にかけての一帯が「静岡県富士宮市北山」、西側は「山梨県鳴沢村鳴沢」である。鳴沢村には字区分として富士山も存在する。そして北側は「山梨県富士吉田市上吉田」とグルリ一周する。

 また、山頂付近は境界線もハッキリとしない上に、8合目から上は富士宮市の富士山本宮浅間神社の境内となっている。過去に様々な所有権争いがくり返されたが、1974年最高裁が浅間神社の訴えを認める判決を出した。富士山頂は天下晴れての?私有地なのである!

 判決は下されたが、それ以降も実質的には国が頂上の管理をしている。それは浅間神社に譲渡しようにも、土地測量や境界線設定等々、登記簿作成の各作業が全く進まないためで、山頂部分の登記書類は存在しないのだという。

 登山シーズンに開設される頂上郵便局は静岡県富士宮郵便局によって管理運営されているが、郵便物を集配する以上管理区分が無ければならない。そこで、住所は決めずに表題の郵便番号を設けたのだという。