随筆
富山 利通 |
7年ほど前私の膝は悲鳴をあげていた。右足を引きずりながら歩いていると左足もおかしくなり、医者からは「歩くな!」と宣告された。当時は和歌山市に単身赴任中で、100m先のコンビニへも車を使う私には辛いことだった。原因は加齢から来るもので、膝の軟骨が擦り減ることに由る痛みである。毎週片側ずつ膝に溜まった水を抜きヒアルロンサンを入れる、こんな治療が3、4ヶ月続いた。 医者より膝に溜まる水が少なくなって来ているし、きれいな状態だから少しずつ膝を強化する為に歩いてみようか、と筋肉で膝を強化する指示が出て、通勤が車から歩きに変わった。会社まで約20分、最初は近道探しに奔走した。<車で行かなければ帰りも歩く、1日1時間位>という単純な発想だったが、帰宅時はほとんど車で送って貰うことが続いた。 通勤時に横断していた公園があった。この公園が気になり、この方向に向かって行けばどこに行くのだろうかと思い、ある日歩いてみる事にした。30分位歩いても公園の端が出てこず心配になって引き返したのが、この公園散歩の始まりだった。次の日また同じ方向に帰る道をとって昨日より少し先まで行くと知っている道に出た。 2ヶ月ほどしてこの公園の全体像が判った。河西緩衝緑地といい、工場と住宅地を分けるための緩衝緑地公園で5ヶ所の公園からなっていた。総面積約16万坪、緑地総延長5400mという広大な森林公園で、体育館、グランド等の運動公園をもち、春には約1㎞の桜のトンネルがあり、3kmの林道と一周すると10kmからなる公園だった。この公園が私の朝夕の散歩道となり、歩く楽しさを与えてくれたのである。 |