県外会員便り

浅間神社 あれこれ

田村 心一
(山梨県富士河口湖町在住)

 前回、富士山8合目上の山頂部は浅間大社の所有地とご案内した。何故8合目から上なのか?浅間大社奥の院を構成する山頂火口跡の深さが、8合目にまで達していることから。

 全国1800余社の頂点、富士山本宮浅間大社は、西暦806年坂上田村麻呂が勅命により、山宮から現在地に祀ったとされる(伝教大師 最澄の比叡山延暦寺開山も同時期とのこと)。現存の社殿は、徳川家康が関ヶ原戦勝記念に寄進したもので、日本唯一の2階建て本殿である。(浅間造という)。

 さて、「アサマ」とは南方系言語で火を噴く山・恐ろしい山をいい火山を意味する。他に煙や湯気を、アサ・アサプともいい「ア」は火を意味するのだとのこと。日本の火山や温泉には、アソ・アサマ・アタミ等々類似地名が多く、九州阿蘇山、信州浅間山、青森の岩木山も古くは「阿蘇べの山」と呼ばれていたとの記述もあるほど。また、温泉では青森の浅虫や熱海・温海などが同義の地名である。アサマ山と呼ばれた山は、長野・静岡他、関東各地に存在するが、フジの名のついた火山は見当たらないことから、富士山も最初はアサマ山と呼ばれていたのかも知れない。

 漢字渡来により「アサマ」に浅間の字が当てられ、音読みで「せんげん」と読んで広まったと思われるが「あさま」と読むのが本義である。現在の祭神は「木花開耶姫命(このはなさくやひめのみこと)」で安産と火の神とされている。しかし浅間大社の社伝では水の神となっているのである。火から水までとは、まあ神様も守備範囲の広いこと。

 延暦・貞観・宝永の3大噴火を含めて有史以来荒れ続けた富士山。本来の祭神は噴火を続ける山の恐ろしい火の神「アサマ大神」なのである。朝廷をはじめ国を挙げて、富士山の鎮まりと静謐な世の中を願って祀られたのが、富士山本宮浅間大社の由緒である。

 このように古今山の神は怖いものと決まっている。事が起これば被害は各所に及ぶ。勿論我が家も例外ではない。手持ち時間も残僅少となった今、私は山の神を大事に祀り、平穏な時の経過を願うばかりであります。