県外会員便り

足慣らしの道に世界遺産が二つ!

飯塚 弘夫
(静岡県伊豆市在住)

 家を出て桂川を渡り、鎌倉古道「不越坂(こえじがさか)」を越えると狩野川河畔遊歩道に出る。正面の小高い丘は、鎌倉二代将軍・源頼家が修善寺に幽閉されたおり、寂しさに月を眺め鎌倉を偲んだと言われる「月見ヶ丘」。丘のたもとには川端康成の小説「伊豆の踊子」に出てくる湯川橋がある。ここを渡り歩を進めると間もなく狩野川公園、川沿いに並ぶ銀杏並木。秋、黄葉の頃、黄金色に輝くさまは真に見事である。

 ここで狩野川大橋を渡り川の右岸を歩く。左手の大仁の城山(おおひとのじょうやま)は300m程の岩山。ロッククライミングの練習場として人気があり、岩壁を登るクライマーをよく見かける。この山は室町時代鎌倉公方の管領・畠山国清が本家の足利基氏に背き知行地である伊豆に来て築いた城跡でもある。川沿いには河津桜の並木が続き、春は花見客で随分と賑わう。南田方地方の農業用水を取水するため作られた天野堰。
高さ342m 大仁の城山

 ここを過ぎると川が大きく左に曲がって流れが緩やかになり、一つめの世界遺産「富士山」の川面に映る逆さ富士が見られる。遊歩道を離れ国道136号線を横断すると、まもなく二つめの世界遺産、今年7月に登録されたばかりの「韮山の反射炉」に着く。ここは韮山代官だった「江川太郎左衛門英龍」号を「坦庵(たんなん)」と称し、江戸湾に御台場を作り、そこに備える大砲を鋳造するために作った溶鉱炉である。当時の炭や石炭では銑鉄を溶かすのに火力が足りないため、炉の天井の熱を反射する仕組みになっており「反射炉」の名がつけられた。
世界遺産 韮山の反射炉

 ここからネコ坂を越すと、左手に代官屋敷「江川邸」があり、屋敷をまわって韮山城址の脇道を過ぎると源頼朝が流罪の身をおくった蛭島(ひるしま)に到着。
  重要文化財 江川邸(史跡・韮山役所跡)      蛭島跡の源頼朝(31才) 北条政子(21才)立像            

 足慣らしの道に世界遺産が二つ観られるとは、
思いもよらなかった。蛭島(通称・ひるがこじま)より伊豆箱根鉄道駿豆線の韮山駅まではひと足。家からこの駅までおよそ15km、帰りは電車で、帰ったらシャワーを浴びてまず一杯と、今日もそのために歩いたか!