県外会員便り

ふるさと富士

田村 心一
(山梨県富士河口湖町在住)

 “3776”では単なる数字の羅列だが、“標高3776m”となれば、頂上に雪を乗せて裾野を優雅に広げた富士山の姿が一気に浮かんで来る。

 標高‥効果絶大なこの言葉、改めて辞書を引いてみた。「海面からはかった土地の高さ」とあった。同義の海抜も引いた。「平均海水面を基準とした陸地の高さ、山地をい
 
う」である。なお、平均海水面は東京湾霊岸島とし、東京湾中等水面と定める。

 まぁ、専門用語というか、お役所用語というか素っ気ない限り。この用語では世界遺産正式名称の「富士山−信仰の対象と芸術の源泉」とは程遠く、単なる突起物でしかない。だが日本人は古代から、姿・形の美しい山や噴火を続けた恐ろしい山を崇める風習を持ち、そのことは信仰から宗教へ変化していった。丹沢大山(雨降山)も水の恵みを与えてくれる神として崇められ、その歴史は古くから続いている。

 我が国は、山に限らず大木や滝など山川草木悉皆成仏の国柄である。キリスト教国間で行われた宗教戦争やイスラム国家での部族間対立などありえない国なのだ。何しろ、八百万の神様がいらっしゃる国なのだから。

 しかし富士登山は男性だけに許された権利だった。多くの山が女性の入山を禁止していた時代で、富士山もその内の一つだったのである。そこで各地に「富士塚」と呼ぶ構造物を築き、女性や子供また年配者が登れるようにして富士山を信心したのである。

 このような富士塚を含めて
@ 本家富士山と同じ成層火山である。
A 成層火山ではないが形が似ている。
B 形は関係なく、山頂や山麓に浅間神社または関連の構造物がある。
以上を「ふるさと富士」の必須条件として全国に広まって行った。だれが決めたという訳でもなく(記録に残っている訳ではない)、現況バラつきはあるものの、「ふるさと富士」が存在しない都道府県はない。