県外会員便り

富士山誕生余話(2)

田村 心一
(山梨県富士河口湖町在住)

 火山は「活火山・休火山・死火山」の3分類と教えられたが、現在その分類は無い。気象庁は「富士山は休火山、御嶽山は死火山」と分類して公式発表していたのだが、1979年 その御嶽山が噴火した!この噴火以降、気象庁がこの分類をしなくなったからである。

 現在は過去一万年以内の噴火歴がある山を活火山とし、そうでないものとの2分類しかしていない。この先も噴火しないという予測(つまり死火山判定)は、実は火山学上では不可能なのだそうだ。防災上常時監視している火山は全国47山で勿論富士山もその対象とされている。富士山は歴とした活火山である。

 1707年の宝永大噴火以来300年余の沈黙を続ける富士山、過去の噴火歴からすると、この長期の静寂は極めて異常、且つ不気味な状況だといわれている。心情的にはいつ迄も今の姿で・・と思うけれど、地下のプレート移動は確実に進行している訳で、Xデーは一体いつになるのか?

 40万年前、小御岳火山が噴火を始めた。富士スバルライン終点辺りのところだ。正確には5合目駐車場の上に位置する小御岳神社が頂上とされているが、2305mの標高は長い噴火造山活動を終えた後のこと。
この時期フィリピン海プレート境界での地殻変動が活発化しており、箱根火山や愛鷹火山も同時に噴火していたらしいから、まあ想像を絶する光景だったことだろう。

 小御岳火山10万年の噴火が終わる頃、南麓で新たな噴火が始まり、後に「古富士火山」と呼ばれる火山が出来た。現在の富士山の土台となった火山である。この「古富士火山」は一定地点からの、主として山頂火口からの溶岩噴出で急成長したが山崩れも繰り返す造山活動だった。この噴火形態が一万年前に変化、それまでの火山を「古富士火山」、以降を「新富士火山」と区別した。長い時間を経て、やっと現在の富士山の原型が姿を見せたことになる。

 噴火と聞けば溶岩という単語を連想するが、溶岩はその温度や成分によって、安山岩質溶岩と玄武岩質溶岩に大別される。日本の火山の大半は安山岩質溶岩と判明しているが、富士山はその誕生以来基本的に玄武岩質溶岩を噴出し続けた。日本では大変珍しい火山とのことだが、例外として宝永大噴火の際、一時的に安山岩質溶岩の噴出があったことが判明している。安山岩質溶岩の火山としては浅間山や阿蘇山など、玄武岩質溶岩の火山としては大島・三宅島の火山などがあるが、数は少なく珍しいそうだ。玄武岩は海底に多い岩石であり、どうして富士山に玄武岩が多いのかは不明である。