紀行

黒部ダム発電所見学ツアーを体感

  阪本 茂義

   最近、NHK総合テレビでブラタモリ「黒部ダム」が2週連続で放映された。私は実はその直前の10月5日に黒部ダム発電所見学ツアーにめでたく当選し体験したので紹介しよう。

 関西電力が募集し、3年越しの応募にラッキーにも当選し友達と二人で参加した。集合場所の黒部ダム駅(トロリーバスの終点)には参加者30人全員が集まった。早速、身分証明書類との照合チェックを受ける。このツアーの最大の魅力は、地中深くにある発電所はさることながら、なんと言っても発電所に至る移動手段であろう。今回私達は黒部ダム駅から欅平へ下るコースを選んだ。
黒部ダム
 

 最初はバス1台が通れるトンネルを大型専用バスでひたすら長い時間(約40分)乗る、よくもこんなに長いトンネルを掘ったものだ。途中横抗の所で下車し大きな開口部へ案内されて外を観ると、青空に映える素晴らしい剣岳を望むことが出来た。トンネル内は湧水がとうとうと側溝を流れており関電の方が柄杓で飲ませてくれた、旨〜い。
秋空に映える剣岳
 

 バスの次の乗り物はインクラインである。34度の斜度を800m超も昇降するケーブルカーのお化けの様なものである。発電所・ダム用の資材・機材を運搬するもので、荷台を客車に載せ替えて30人の参加者を一度に運ぶ。先頭から覘くと目も眩むような急斜面である、ゆっくり20分ほどかけて下った。レールの脇にトラブル発生時に降りて歩けるように細い長い階段が設けてある。
インクラインの先頭から急な斜坑を望む インクラインの内部

 インクラインを降りて水平道を少し歩くといよいよ発電所施設である。広く高い部屋に発電機が4機どーんと並んでいる。一角に巨大な水車の羽も展示してあった、全体の巨大さが想像できた。
 くろよん発電所の4機の発電機 巨大な水車の羽 

 下の階に回って停止中の発電機のぶっといシャフトを間近で見させてくれた。黒部の山全体のジオラマを中央に囲む円形テーブルのある会議室が昼食会場であった。昼食後は蓄電式バッテリートロッコに乗り込む。中間辺りを通る時、案内人が窓を開け蒸し風呂の様な暑さを体験させてくれた、最大の難工事となった高熱隧道だ、今でも40℃もあるらしい。
蓄電式バッテリートロッコの前で

 谷あいを渡る所で一度外に出たトロッコを降りて、仙人谷ダムと深い秘境の谷を覗き込み絶景を楽しんだ。
仙人谷ダム直下の深い渓谷

 約30分でトロッコの終点に着いた。次は高度差200mの巨大な竪抗エレベーターである、ビルの50階に相当する高さを2分で一挙に下まで降りた。最後は工事用トロッコ電車に乗り、5分ほどでツアー終点の欅平駅に着いた。
高度差200mの竪抗エレベーターへの坑道

 今回、もの凄い労力と犠牲を払って完成した地下深い坑道と諸設備・発電所の見学を体感して、どの場面でも身体中の血が騒ぐ感動の連続だった。コース全てで関電社員の親切さに触れ、とても満足な見学ツアーであった。解散後は欅平奥にある祖母谷(ばばだに)温泉まで足をのばし、山荘の露天風呂で興奮を癒し、昔北アルプスから下山時にここで泊ったことを思い出しながら一夜を過ごした。
祖母谷(ばばだに)温泉