伝統工芸との出会い

小島 則之

昨年の初夏に知人の誘いで知り合いの江戸指物師のお宅の仕事場を見学させていただく機会があり多くの指物の作品や工程の見学、説明を懇切、丁寧にして頂き指物の世界が少し覗けて感激しました。

私も江戸指物という言葉や作品は今迄見聞きしていて何となく理解していたつもりでしたが数々の作品等と直に接してみて改めて先人が築いてきた奥の深さと精巧さに感嘆してしまいそして伝統を継ぐという役目もまた大変な事だろうと感じました。

指物師という職人さんの日々の積み重ねが修行に通じることやまた
指物師仕事場での小島さん
そこに伝統を継ぐという自負があるのではないかと思いました。私も過去に寺社建築や数寄屋風建築の仕事に携わった事がありましたがそれを使う人の立場を考えた意匠形態や細部の寸法まで等が先人達がその時代と共に創り上げてきた形が伝統になりそれが今に継承されてきたものであると考えます。そこにその時代の風潮等をアレンジしてその時代のニ-ズに合わせた作品を創り上げることと考えます。

現在は人々の考えも多様化していて難しい時代ですが工芸の伝統という基本を守りその中で創意工夫を凝らしこれを継承する限り他の人には真似のできない職人の自負を感じました。職人同士の切磋琢磨はもちろんですが世の中のさまざまな人との関係や社会、そこに暮らす地域との結びつきの中で周りの人とどのように接し自分が今何をすべきか周囲の変化を感じ取り社会の変化に己を順応させる技等も吸収していくことも自分への戒めも含め日々考えていかなければならない時代になったのかも知れません。お伺いした日が丁度3年に一度の祭礼の日でそこでまた下町特有の地域の人の繋がりを目の当たりにして羨ましくも昔はどこにでもあった人の繋がりが懐かしく思われました。

ウオ-キング協会に参加させていただき少しでも世の中を知り周りの人との繋がりを心掛ける気持ちを持ちたいと改めて感じた江戸指物見学の1日でした。