随筆

秋の稲穂に思うこと

今井 博宣
 酷暑の夏も去り秋の気配が漂い始めた昨今、水田ではたわわに実った稲穂の先端がまるで人がお辞儀をするがごとく低く垂れさがっている姿を目にします。この光景を見ると私は、「実るほど頭(こうべ)を垂れる稲穂かな」という戒めの諺とともに、ウオーキングを始めたばかりの頃の鮮烈な思い出がよみがえります。

 2年前、FWAの会員になってすぐ、「ふじさわウオーク2016」というイベントがあり湘南台公園から江の島を回って奥田公園にゴールするという20Km自由歩行のコースに、どうってことないだろうと高を括って気楽に参加しました。ところが、開けてびっくり、私より年上の先輩方の健脚ぶりに驚かされました。私は一生懸命歩いているつもりでも私よりはるかに先輩に見える女性の方々にも軽々と追い越され、最後は疲労困憊、青息吐息でどうにかゴールする始末でした。私は自分の至らなさに気づかされ、諸先輩方の長年培ってきたウオーカーの実力に驚かされるとともに、その実力と経験をおくびにも出さずあくまでも自然体にふるまう謙虚な姿に、大事なことを教えられたような気になりました。

 その時以来、“謙虚であれ”ということがとても大事なことだと考えるようになりました。この季節になって、一生懸命実った稲穂がけなげにその頭を下げている姿を見ると、あの時の教訓が思い出されます。これからもあの時の思いを胸にウオーキングを続けていこう、そして少しでも謙虚で誠実な人間になれればいいなー、と思う今日この頃です。