紀行
弓削 玄雄 |
この渓谷は秩父多摩甲斐国立公園内の山梨市にあって、国師ヶ岳(標高2,591m)を源流とし、巨大な花崗岩を清流が浸食してできた。天然の芸術のごとく、原生林を流れる渓流がいくつもの滝を作り、神秘的な魅力に満ちあふれていた。 晴れが続いた令和元年11月15日(金)に大菩薩峠に登り、下山して塩山温泉(山梨県)に一泊し、翌日の16日(土)西沢渓谷を歩いてきた。 塩山駅からバスの終点・渓谷入口に9:30に着き、紅葉真っ盛りで、赤いモミジが美しい中を歩き始めた。初めは少し上りの林道で、西沢山荘(休業中)前を通り、約40分歩いて二俣吊り橋を渡ると西沢渓谷と書かれた大きな看板があり、この少し先からが渓谷左岸沿いの遊歩道(登山道)となった。この道が凄かった、細くて非常に歩きにくい小さな岩の瓦礫の道だった。左側は渓谷の崖、ステンレスの鎖に掴まりながら登るところも幾つかあった。一歩一歩足の踏み場を確認しながら歩かないと捻挫したり、滑って転げ落ちそうな道で、このような道を約2.5km、1時間半以上も登らねばならなかった。しかし、渓谷の景色は素晴らしく、次から次へと見ごたえのある滝が現れた。「日本の滝百選」にも選ばれた名瀑・七ツ釜五段の滝を筆頭に、三重の滝、竜神の滝、恋糸の滝、貞泉の滝などさまざまな滝が織りなす渓谷美は、筆舌に尽くしがたい。国内屈指の渓谷美を誇るといってもよい。 これらの滝は周囲の山から渓谷に落ちるのではなく、渓谷の流れそのものが滝だった。水は澄んでおり、ここの渓谷の美しさは国内屈指だということが納得できた。また、渓谷沿いの道でこのような険しい遊歩道を上ったのも初めてだった。 七ツ釜五段の滝の前で渓谷の右岸に渡り、不動の滝の先から道は渓谷を離れ、急な斜面の山道を山の中腹にある旧森林軌道の跡まで登った。ここまで歩き始めてから約6km、2時間25分もかかった。ここで10分休憩し帰り道となった。帰りは山の中腹の旧森林軌道跡の道を下り、約5kmで1時間20分かかり、13:25バス停に着いた。 |