紀行
藤井 誠 |
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桜が咲き、山吹の黄色、若葉の香り、ひろがる麦畑、霞のかかった富士山を見、春真っ盛りの秦野の野山をひとり歩きして、帰宅した。それは去年の4月7日、緊急事態宣言が発出された日であった。 数日後、朝8時に出発し久良岐公園、磯子旧道を歩き昔、市電が走っていた八幡橋まで出てきた。堀割川(土木遺産)、中村川沿いを歩き、港へ向かう。我が家を出て7〜8kmの距離だ。 コロナの発祥地が中国の武漢と聞くと、自分の心に偏見がわくなか、中華街を歩く。10時過ぎ、両側の店はシャッターが閉まっていて中華まんの蒸す湯気がない。店の看板の金色、赤、高フ色彩が目立つ。中華門から先まで見渡せ、自転車が一台横切っていた。こんな状態は見たことがない。なにかヒャッと寒気がした。
山下公園、「水の守護神」は噴水が上がっている。周りの花壇は見事に春の花が咲き誇り、奥に「氷川丸」が見えていた。バラ園の入口が閉ざされ、近づくと今見頃の華麗な赤いバラが見えた。ベンチには黄色のテープでクロスに貼られ座ることはできない。海沿いには親子連れやカップルが散歩し、芝生には小さな子供が遊んでいた。大桟橋に大きな船「飛鳥U」が船尾を向け、薄い煙を吐いている。赤レンガ倉庫まで来ると、石畳の大広場には誰もいない。こんな情景は普段とまるで違う。新港中央広場の大木には若葉が香り、花壇には赤いチューリップ、ムラサキのラベンダーが見事であった。色とりどりの花が咲いているなか乳母車を押す婦人を見かけ、先をゆく。まるで凱旋門のような空間をぬけ汽車道を歩き、大岡川の河口に建つ横浜新市庁舎32階の高層ビルがある。6月開庁でまだ内装工事中だが、リバーサイドには春の草花が植えてあった。帰路はこの大岡川を遡る。八重咲きの桜をみつけ川沿いの道を歩いていった。 マスクを付け一人歩きの日常に変わってしまった1年。歩友達と楽しく歩けるのはいつになるのだろうか。
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