随筆

私と天声人語

横山 清子

 昨年5月、その頃はマンション、オフィス等の清掃の仕事に専念していた。コロナ禍での規制が強化され、10年間続けていた友人達とのオカリナ教室も、私の練習場となるカラオケ店への出入りが怖くなり、やめざるを得なかった。ウォーキングも次々と中止となり、時間を持て余す日々が続き、余暇の使い方を真剣に考えた。

 その時に閃いたのが、以前から気になっていた、朝日新聞の天声人語の書き写し。書くことも継続することも、30年近く日記を書いている事で実証済み。娘に相談すると賛成してくれ、即その場でコールセンターに書き写しノートを申し込み、そのためのボールペン、記事を貼るノリ等を購入してくれた。ノートが届いたのが5月17日、次の日から待望の書き写しが始まった。記事の字数600字を書き写し、自分なりにタイトルをつけ、内容を要約する。記事を切り抜いてノートに貼り、解らない漢字や言葉は辞書で調べる。諸々の作業は1時間を要する。

 その年の8月末で20年以上続けた仕事も卒業。ますます動きが少なくなり、体力・筋力の落ちるのが心配になり、朝食後書き写しの後、自分で5コース程ウォーキングコースを作って、初めは1時間、慣れてきたら2時間近く、雨天でない限りウォーキングを実行している。

 今では書き写し後の内容の要約も、詳細に記す余裕もでき、最近はノートの最後の余白部分に、「折々の言葉」も記している。書き写しを始めて1年4か月。ノートも16冊目となる中、世の中の出来事、それも様々なジャンルで、最も新しい事件や、忘れてはならない古い出来事が解り、継続した事で漢字を覚え、辞書を引く事で納得する。86歳での脳活。楽しい天声人語に感謝!