ゆっくりウォーク 俣野別邸庭園

  小島 則之
 
 昨年12月10日の例会「もみじの俣野別邸庭園」ウォークで、湘南台公園〜俣野別邸庭園〜ふじさわ交流館11kmのコースを歩きました。12月とは思えない程風もなく、穏やかな小春日和の日でした。

 湘南台公園から俣野別邸庭園を目指してスタ−ト。出発まもなく境川の堤を左に見て、藤沢工科高校前の道から小栗判官伝説の地を通り、亀井野や俣野のブランド野菜栽培
 東俣野中央公園の紅葉
の田園風景の中を進んだ。そして境川の「青い橋」を渡ってまもなく、境川と別れ東俣野中央公園に寄った。公園では今が盛りのモミジバフウの紅葉を堪能し、富士山を横に見て高低差のある園内をゆっくり散策した。公園を出て少しアップダウンのある小道を進むと、スタッフの方が待つゴールの「俣野別邸庭園」に到着した。


 俣野別邸は個人的に以前から気になっていた所ですが、予想通りY字型の建物配置と庭園をもつ素晴らしい別邸だった。施主は旧住友家第16代当主、住友吉左衛門友成の和風ベ−スの「和洋折衷建築」が特徴の郊外型別邸。昭和14年現在の戸塚区東俣野町の境川の河岸段丘に建設されたものである。施主は普段は都内で多忙な日々を過ごし、休日はここでくつろいだ時間を楽しんでいたらしい。これはイギリスの貴族が平日をロンドンで、休日を郊外のカントリ−ハウスで自然を楽しむライフスタイルに似ていたという。これは当主の海外留学の経験からこのような暮らし方を理想としていたらしい。

 
「俣野別邸」
正面玄関・大屋根下の車寄せ 
  南側全景 

 設計は私の敬愛する佐藤秀三で、住友本店営繕課で建築に従事し、同営繕の系譜をひき昭和4年に現「佐藤秀」工務店として独立した。日本家屋の伝統を大切にし、洋風建築の要素を大胆に取り入れた設計が特徴で設計から施工まで一貫して手掛ける独特のスタイルで、木造大架構の「日光プリンスホテル」等の幾多の名作を生んでいます。

 この俣野別邸の外観も英国風の素朴で、力強い印象と目を惹く大きな屋根、建物背面の二階切妻屋根軒下の部材の外観のアクセント作り、のびやかに翼を広げたような建物配置、当時最先端のモダニズムと流行のアールデコが散りばめられた意匠等、彼の特徴が随所に発揮されているようです。間取りも応接スペ−スは殆どなく、家族と過ごす広いリビングと、使用人の棟との構成だったようです。二階西側には丹沢山系や富士山を望む展望室があり、今でも変わらぬ雄大な風景が見られます。58,996uと広大な庭園は河岸段丘の高低差を利用した地形が特徴で、外苑と内苑に分かれています。木々や芝生庭の巧みな配置で構成されていて季節の花々や紅葉も素晴らしく、建物と一体化した造りの園内を散策すれば外界の営みを忘れる程気持ちが穏やかになり、日常の煩雑な世界から解放されたいと思う当主の気持ちもよく分かるというものです。

バルコニー上部の2階切妻屋根
軒桁を支える筋交いのような部材が外観のアクセントになっている

 ちなみにこの「俣野別邸」の建物は平成12年に相続税の対象として国に物納され、平成16年7月に国の重要文化財に指定されましたが、同21年の修復工事中の不審火で全焼し、これに伴い同23年に重文を解除され、現在の建物は焼失後、横浜市が公園施設としてオリジナルのものを忠実に再現、再建したものです。平成29年2月に横浜市認定歴史的建造物になりました。施設は一般に貸集会室などで供用されており、邸内には喫茶室「ひだまりガーデン」もありお話が楽しめます。