紀行

ベトナムを歩く(6)

ハノイ郊外・マイチャウ(1)

 平成26年9月25日 池内淑皓

  ハノイ滞在6日目、今日はハノイから170km程離れた、ラオス国境に近いマイチャウと言う村を訪ねる。ここには高床式の住居に住む、少数民族のターイ族が生活している「Lac1village」という小さな集落に一泊して、ターイ族の生活を垣間見る事にした。
  地球の歩き方ガイドブックには行き方の詳細が無く、タクシーを借り切っても泊りがけだから、費用もそれ相当にかかるし、帰りの足も心配だ、結局APTトラベル(www.tnkjapan.com)にコンタクトしてツアーで行くことにした。

  「ハノイ近郊図」       地球の歩き方「ベトナム」より引用

  8時、ホテルにツアーの車が迎えに来た、ツアー客は私一人であるという、費用は二倍掛るけれど(2名から催行)その方が我儘な旅ができるから好都合だ。
日本語ガイドさんの名は「チョンさん」、日本で3年間、機械工場で働いたと言う、ベトナムに帰って結婚して、APTで仕事をしていると自己紹介してくれた、控えめな好青年だ。
  私が彼に会うや否や「シンチャオー(こんにちは)」と挨拶したからだろうか、いきなり鞄からボードを取り出してベトナム語のレッスンを始めた、”マ”という発音の区別が分かるかと言う、(苗、馬、墓、頬、悪魔、しかし) 全部 ”マ” の発音だと解説してくれるが、全く区別がつかない、全部同じ抑揚に聞こえた。
ベトナム語には 6ッ の声調があるという事を説明してくれる。私も負けずに言う「日本にもある、分かるか」と紙に書いて渡した。(橋、端、箸)、 (亀、甕、噛め)
  これから15日間ベトナムを旅する私、絶好の教師が見つかった、車中から見える看板を、片端から指差して発音してもらった、文字はアルファベットだから読める。
  チョンさんがウンザリしてくるまで聞きまくった、不思議なことに、だんだん発音と意味が分かるようになってきた、繰り返しの効果は大きい。
  途中トイレ休憩を兼ねて茶店で一休み、暑い最中サトウキビを絞った冷たいジュース(ミア・ダ)はうまかった、ほんのりした柔らかい甘みの中に、氷を入れて飲む、ドライバーさんは水タバコを吸っている、火鉢には大型の川魚が串刺しで焼いている、一匹700円(140,000vd)だそうだ、夜のおかずに結構買ってゆくらしい。

マイチャウへ向かう途中茶店の前で、奇岩の間を道は続く

 
砂糖キビを絞っている所「ミア・ダ」の
ジュース 

 
日本語ガイドさんの「チョンさん」とミア・ダ
を飲む

一匹700円の串焼きの川魚

  途中水力発電所に立ち寄る、チョンさんが東南アジアでは最大の水力発電所だと説明してくれた、出力1,920メガワット/日、はるか南のホーチミン市まで送電しているのだ、と自慢げに話す。
  ダムはロックフィルダムであった、貯水状態を見たいので堰堤まで駆け上る、チョンさんは途中で音を上げた、雨季の今、満々の水を湛えていた。この国は他のアジアの国々と同様、電力が慢性的に不足していると言う、原子力発電を推進しようと現在日本と商談中だ、この国に地震は無いのだろうか。

 
ダムにて


ダー川支流の水がここに溜まる、
源流は中国

  13時過ぎ、「マイチャウ・ターイ村・ラック1ビレッジ」に着いた、広い盆地の中に水田が広がる、田圃に囲まれるようにして20世帯程が高床式住居を構え、ほとんどの家がゲストハウス(民宿)を営んでいた。説明ではレストランで昼食と書いてあったが、昼は今日泊まるゲストハウスでの昼食となった。

昼下がり、 マイチャウ・ラック1ビレッジのメイン道路(赤い旗はベトナムの国旗)

ハノイビールとお魚と、お肉といつもの野菜サオ・トイと野菜スープ、ご飯

  外は焼けるほど暑い、ガイドさんに30分程散歩して来ますと告げて、ぶらりと部落の周辺を歩く。昼下がりは誰もいなくて村は静まり返っている、

  家の下に池を置き、自然のトイレとする、魚がそれを食べる、魚は市場で売れる。池のために家は涼しい
  蓮は花を仏花とし、実は商品として売れる、栄養分に富む溢れた水は田を潤す、無駄のない仕組みだ。

 
  家の回りにバナナ、マンゴー等を植えておけば、果物に不自由はしない、亜熱帯のここは一年中実を付ける。

山裾に沿って住居が並ぶ、田圃の畦道にはマンゴーが実っている

ーイ族が生活する典型的な高床式住居、下には家畜が住んでいる。

  高床式住居の利点は、猛獣類から守る、泥棒から守る、涼しい、床下には家畜小屋、納谷、物干し等の利点がある。
          
  小川のほとりで水遊びをしている子供達に出会う、しばらく佇んでカメラを向ける。
  昭和19年東京大空襲で信州に強制疎開となり、そこで川遊びをした記憶が、走馬灯のように頭の中を駆け巡る、私も確かにこの時があった。
  子供たちはカメラを意識して、盛んに橋から飛び込み水音を立てる。
  耳を澄ますと、どこかで機織の音が聞こえてくる、音を頼りに歩く。集会場のような所で女性たちが、手工芸品を作っているのだ、何気なく作業場に入って素敵なバッグに目が止まった、奥から若い女性が松葉杖をついて出てきた。
  ここで作業をしている人のほとんどが、ハンディキャップを背負っている人達だという、お店の名前は「Hoa Ban](www.hoabanplus.com) ハノイから、日本からもバイヤーが買い付けにくると言っていた、丁度お金の持ち合わせがなかったので、明日また来ますと言って彼女達と別れた。

パタンパタンと静かな杜にこだまする

 松葉杖を使って応対してくれたお嬢さん(奥)、にこやかな笑顔が忘れられない

  宿に帰ったら、チョンさんに顔色を変えて怒られた 「30分がもう夕方ではないか、どこに居たの、バイクで運転手さんと村中探し回ったよ」と、おかげで素敵な午後を楽しませていただいた事を感謝した。シャワーを浴びてビールを飲んで部屋で休息。


私が泊まった部屋、母屋に付属して部屋が新築されている。


4畳程の広さ、エアコンはないが蚊帳はある暑い 

  夜7時から郷土芸能を行いますとの案内があった、どこでするのかと思ったら、私の部屋の真ん前で行うとの事、座敷は30畳程の広さで板敷、部落内での集会もここで行われるのだろうか、20名ほどの観客が集まって来た。30分程郷土芸能を披露してくれる、最後にバンブーダンスを行い、壺から長いストローで親愛のお酒を皆で飲む、日本の宴会で杯の回し飲みと同じ風習だと感じた。

部落の集会に使われる程広い、30畳程の広さがある この座敷で郷土芸能が披露された

   
 歓迎の歌、歓迎の踊りいずれも素朴だ、全員村の娘さん達


バンブーダンスに挑戦


観客はストローで甕に入ったお酒を飲む、親愛のしるし
 
続く