紀行

東海自然歩道を歩く(6)

西野々‣黍殻山・袖平山・神ノ山

 平成27年7月9日 池内淑皓

 5月の連休を利用して、東海自然歩道中最も厄介なルートとして有名な、裏丹沢コースを歩く事とした。連休中であれば多くの登山者が訪れるから事故対応がとれ、神ノ川ヒュッテが営業すると考えたからである。
このヒュッテは3名以上の宿泊者がいないと営業しない。連休中営業の可否を問い合わせたら、宿泊者が居ないので営業しない、とのつれない返事が来て、仕方なく天幕持参で出発した。
 連休中の天気は快晴で雨は来ない、との天気予報に背中を押されて出発する事にした、ザックの総重量は 25kgあった、70才過ぎた爺さんにしては少し重い。
 日程は5月1日神ノ川天幕泊り、5月2日は犬越路を越えて西丹沢自然教室に到り、更に西沢を登り詰めて畦ヶ丸山避難小屋泊り、5月3日は菰釣山を経て山伏峠から山中湖平野に到るコースを歩く。
このルートはアップ、ダウンが激しく尾根には水場が無く、逃げ道が少ないので、山慣れていないと大変苦労するから、出来るだけ単独行は避けたい。
 2015年5月1日(金)快晴。相模原市緑区青野原西野々バス停前の東海自然歩道、焼山への道を歩き始める。バスであれば三ヶ木から月夜野方面行きがあるが本数が極端に少ない、私は家から車で送ってもらった。 

 「東海自然歩道行程案内板」 この案内板はコース中到る所で掲示されている。
 今日のコースは、西野々(3.7km)、焼山(2.1km)、黍殻山(2.8km)、姫次(5.6km)、神ノ川園地まで合計  14.2kmである(水平距離)。距離のわりに登り下りが激しい、歩行時間約9時間を予定する。

西野々バス停から焼山、犬越路、畦ヶ丸、菰釣山、山伏峠、山中湖までの西丹沢縦走路
                    (東海自然歩道(武井岳男著)山と渓谷社刊より引用)

「今日歩く行程」 西野々、焼山、黍殻山、袖平山、神ノ川園地
       「東海自然歩道 西野々・神ノ川概念図」(武井岳男)山と渓谷社刊より引用

                   「西野々~黍殻山行程図」(丹沢・昭文社刊)

西野々バス停前を出発。  バスは三ヶ木から月夜野行が出ている、平日7:40と10:00(東)がある

焼山への登山道、東海自然歩道の案内板は民家の敷地内の高い所にあり、見落としやすいので注意、バス停から10m下がった右側にある。不動明王や石仏が並ぶ

杉、檜林の中を登行する、西野々(標高340m)から焼山(1060m)まで720m登る、初っ端からの直登はきつい。

気持ち良い尾根道に入ると、突然白樺林の中を行く、丹沢で白樺はおかしい、と下山後調べてみたら、地元「焼山愛好会」の人達が植えて丹精しているのだと言う、新緑に白樺の白が良く似合う。

「焼山頂上(1060m)」 2時間20分程かけて到着、頂上には展望台が設置され見晴は申し分なし、これから歩く山脈が手に取るように眺められる、頂上には数個の祠があり、鳥屋、青野原、青根地区の人達の信仰の場所であると云う、山岳信仰の一つなのであろうか。

「黍殻山頂上(1272m)」 やっと緩やかになった稜線を小一時間ほど歩くと、自然歩道は黍殻山を巻くように行く、私は頂上の三等三角点を踏むことにした。
5分程で到着、頂上は見晴も悪く、無線中継所の施設がポツンと建っているのみだった。

檜の樹林帯を歩く、ひのきの匂いが疲れを癒してくれる

「東海自然歩道全コース最高標高地点(1433m)」 高尾山から大阪箕面まで総延長1600kmコース中で最も標高の高い位置にある、思い出に一枚パチリ。

この辺りは大きなブナの木やカラマツも育っており、西丹沢の中では最も快適なトレイルとなっている。

「東海自然歩道全コース最高標高地点周辺図」、袖平山でないことに注意、多くの書物に最高地点は袖平山と記述されているが、正しくは姫次から3分黍殻山に向かうところにある。

「姫次」 なだらかな草付の広場、カラマツが標高の高い高原の雰囲気を醸し出している
この辺りは神奈川の美林に選定されているだけあって、中部山岳地帯に来た感じがする。

富士山が見えた。ルートは西へ、富士山方向へ向かって歩いているが、山の後で富士山は見えにくかった。

「姫次」蛭ヶ岳(1673m)の頂上小屋の屋根が光って見える(丹沢山塊最高峰)。ここから一時間半程で行ける、神ノ川ヒュッテが使えない場合、蛭ヶ岳山荘に泊まって東海自然歩道を歩く人もいる。この場合二泊目の宿泊は箒沢となるだろう、箒沢は民宿が多いから安心して泊まれる。

  
「袖平山頂上(1432m) カラマツ林の中が山頂、ベンチが二つ。南の蛭ヶ岳、檜洞丸(1601m)が良く見える

                       檜洞丸(1601m)

説明板の通り袖平山(1432m)から神ノ川園地(530m)まで900mを一気に下る、寝不足と疲れから木の根につまずかないよう、最大の注意を払って下る、姫次から先は登山者には出会わなかった。

約3時間かけて神ノ川に出る、川を鉄橋で渡ると林道に出て、10分程で神ノ川園地に出た。 ここには神奈川県が奇麗なトイレを設置してくれた。

「神ノ川ヒュッテ」 16時10分ヒュッテに到着、当然小屋は閉じているから天幕を張る。

天幕を張り終えた途端下から車が上がってきた、もう薄暮である。
ヒュッテの前に車を止めて、小屋を見回りに来たのだと言う。私から天幕場使用料と、施設使用料(トイレ、水場、炊事場)を徴収して帰って行った。今日は私以外ここには誰もいないのだ。

とにかく「いいちこ」で乾杯!7時半から16時まで9時間、標高340mから歩き始めて最高点1433mを越えて、530mまで降りてきたのである、南アルプスを歩くより楽ちんかな。
山の端から満月が顔を出すまで、ゆっくり静寂を楽しんだ。

この項完

 
 [参考タイムを記す]2015年5月1日(金)快晴
  西野々(7:20)→焼山(9:40-9:50)→黍殻山(10:45-10:55)→(昼食)→姫次
  (12:25-12:30)→袖平山(12:50-12:55)→風巻の頭(14:25-14:35)→神ノ川ヒュッ
  テ(16:10)

東海自然歩道を歩く(7)神ノ川-犬越路-西丹沢自然教室-畦ヶ丸へ続く