金子さんとタンゴ


八柳修之

 金子勝彦さんのウォーキング川柳、連載10年、120回をもって10月に終了した。
 真に残念ですが、長年に亘り楽しませていただき有難うございました。会報は金子さんの川柳から見るという人が多いとも聞きました。中にはあの人の事を詠んだのかと思い当たる節もあり、エスプリが効いて面白かった。
 金子さんは熱烈なタンゴ愛好者(タンゲーロ)でもあった。大分前、昔、収集したアルゼンチンタンゴ集のカセットテープを差し上げたら、寅年の 思わぬ方から お年玉 と何句かいただいた。金子さんの了承を得て披露したい。

 古の タンゴが活きる 再生器 
 アナログの 音色は軽し セピア色
 耳入る あの懐かしの ダリエンソ 
 いつ聴くも ラ・クンパルシータ 群れを抜く
 さすがなり 政調カナロの タンゴ節 
 突然の 巻舌伝法 男節


 男節とは国民的英雄歌手 ガルデルのことであろう。タンゲーロは演奏派、歌派、踊り派とあるが、金子さんは演奏好き派だが、ピアソラの曲は、あれはタンゴではないというのが二人の一致した意見である。
 金子さんは数あるアルゼンチンタンゴの中でもファン・ダリエンソの演奏する「ラ・クンパルシータ」が特にお気に入りである。作曲者はH・ロドリゲス、17歳のとき行進曲のつもりで作曲した。クンパルシータとはイタリア語の仮装行列、母国ウルグアイでは第二国歌として親しまれている。


初盤 「ラ・クンパルシータ」のレコードのカバー

 曲きざむ バンドネオンに 魅せられて 
 出来得れば タンゴのリズムで 歩きたい
 

 金子さんはいつも頭の中でタンゴの曲を頭に刻みながら歩いているのであろう。時には疲れて気怠いボサノバになったかも知れない。

 元気よし バンドネオンの ストライド 
 そんなに 哀しいですか ヴァイオリン 
 そんなまで ピアノは強く 叩かれて
 ミロンガが 鳴くとき一緒に コーヒーを
 好きになる タンゴ十五の 時だった


 金子さんと私はそう歳は違わないと思うが、1950年代、子供だった私がタンゴ好きになったのはラジオから流れる決して日本語では歌わない藤沢嵐子の「カミニート」であり「アディオス・パンパミア」であった。タンゴの歌詞は日本の演歌に通じるものがあるのだが。

 黄昏の もうタンゴは 踊れない 

 YouTubeでダリエンソの「ラ・クンパルシータ」を検索して聴いて見て下さい。金子さんの世界に入ることができます。金子さん、長い間有難うございました。
投降しないで時には投稿して下さい。