紀行

東海自然歩道を歩く(68)
石山寺・音羽山・逢坂の関・三井寺・滋賀里駅

 平成30年7月28日 池内淑皓

 2017年12月19日(火)、二日目の今日は薄曇りで寒い。ホテルから歩いて京阪電鉄浜大津駅に向かい、石山寺駅下車、昨日の続きを歩く。

東海自然歩道(石山寺~音羽山~逢坂の関~三井寺)

今日も夜明けと共に電車に乗る。終点の石山寺駅から昨日の続きを歩くとしよう。

まずは、駅前の道標に導かれて、最初の通過地「幻住庵」(松尾芭蕉の逗留地)に向かう。

「幻住庵」は近津尾神社境内の外れにひっそりと在る。

芭蕉は元禄二年八月(旧暦)奥の細道を終え、翌元禄三年(1690)膳所藩主の招きでここに4か月逗留し「幻住庵記」を著した。
           “まずたのむ 椎の木もあり 夏木立” (ばせお)

「幻住庵記」  石山の奥岩間のうしろに山あり国分山と云うそのかみ国分寺の名を伝ふる・・・・・ 

国分の住宅地を抜けて、音羽山に向かう。冬枯れの寂寞感があるが、気持ち良い茅戸の原だ。
音羽山一帯はハイキングコースらしく、道が良く整備されて歩きやすい。

       尾根道も快適

       「音羽山(539m)山頂 

逢坂の関への道、昔の逢坂山付近なのだろうか、秋には「さねかずら」が実っているはずだが、見つからなかった。
(実葛は常緑のつる性の木、8月頃に花が咲き、木苺のような赤い実をつける)

”なにしおば おうさかやまの さねかずら ひとにしられで くるよしもがな”(藤原定方)

音羽山を下ると、国道一号線(旧東海道)の真上に出る、自然歩道専用の歩道橋で対岸に渡る

歩道橋から見た逢坂の関(写真右に碑がある)。 国道一号線と、旧東海道(右)。
平安時代の「逢坂の関」があった所、正面の「かねよ」(料亭)に関の閂石が現存している、またこの庭には「さねかずら」が植えてある。 
逢坂の関は平安中期(857)に設けられた、亰の都防衛のためである。
               
”よをこめて とりのそらねは かかるとも よにおうさかの せきはゆすさじ”(清少納言)

歩道橋から100m程で「蝉丸神社」(分社)があるから、往復してこよう。
蝉丸神社上社はここから300m滋賀県側に下った所にある、下社はJR大津駅そばの逢坂一丁目にある。三社合わせて蝉丸神社とも言う。

「蝉丸神社」 この社は分社。
旅人を守る神として、猿田彦と豊玉命を逢坂山の山上(神社)、と麓(下社)に祀ったのが始まり。
平安中期、琵琶法師の蝉丸が逢坂山に住んだことから、その死後祀られるようになった。

  ”これやこの ゆくもかえるも わかれては しるもしらぬも おうさかのせき”(蝉丸)
              (百人一首で、唯一濁点のない一枚)

東海自然歩道(長等公園~三井寺~弘文天皇稜(大友皇子への道))

長等公園を過ぎると、三井寺に出る。今日のお目当ては三井寺(園城寺)だ。
三井寺の名の起こりは、天智、天武、持統天皇の産湯に使用された冷泉があり「御井の寺」から三井と名付けられたと云う。
自然歩道は直角に三井寺の山門を潜る。

「金堂」本堂、国宝 三井寺の総本堂。本尊の弥勒菩薩は天智天皇の霊像で秘仏。
現在の建物は、慶長四年(1599)秀吉の母、北政所により再建され、桃山時代を代表する名建築として国宝指定

          
      大日如来坐像

「鐘楼」 重文 近江八景、三井の晩鐘で有名。 慶長七年の再建で日本三名鐘の一つ

東海自然歩道(三井寺~近江神社~大津宮跡~滋賀里駅)

「新羅三郎の霊堂」(善神堂) 国宝
歴応三年(1339)足利尊氏が再建した。源頼義の子、義光がここで元服し、新羅三郎義光と名乗った。

        
「弘文天皇陵」 明治三年になって天皇と追号されたが、即位したかどうかは不明。名は「大友皇子」古代史ではあまりにも有名な壬申の乱で、大海皇子(天武天皇)と皇位継承の戦いを演じ、悲惨な最期を遂げる、当年25歳であった。
陵は、大津市役所の裏にあり、新羅三郎義光と背中合わせに在る。

「大津宮錦織遺跡」 近年の発掘で、どうやらここが大津宮跡ではないかと推定されてきた。
天智天皇667年朝鮮の白村江の戦いで倭国が敗退すると、飛鳥宮からここ大津に遷都した。
遷都後わずか5年で天智天皇が没すると、壬申の乱が始まる。戦いに勝利した大海皇子は、大津宮を捨てて飛鳥に戻り、ここは廃墟となってしまった。

「近江神社」 祭神は天智天皇
この地は天智六年(667)飛鳥宮からここに遷都した由緒に因み、昭和15年皇紀2600年を記念して創祀された新しいお宮。 

今日のゴール地は京阪電鉄「滋賀里駅」。 冬の日暮れは早い、浜大津にある宿に戻った。
                                               36,500歩

        
[参考タイム] 石山寺駅(7:30)→幻住産跡(8:20-8:30)→音羽山539m(10:50-10:55)→逢坂山歩道橋(12:05)→蝉丸神社往復(12:20)→三井寺(13:30-14:15)→弘文天皇陵(14:50)→近江神社(15:30)→滋賀里駅(15:45)          この項完

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